「京王 presents Wリーグプレーオフ2023-2024」ファイナル

 バスケットボール女子Wリーグの新女王・富士通は、徹底した意識統一で栄冠を掴んだ。15日に東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで行われたデンソーとのプレーオフ決勝第3戦に89-79で勝利。16年ぶり2度目の優勝を決めた。常勝ENEOSから移籍3季目の主将・宮澤夕貴は、メンバーの日常生活から改革。整理整頓など細部までこだわった日々が、全員バスケに繋がった。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

 ベンチは今にも爆発しそうな喜びを必死で抑えた。残り0.5秒で10点差。笛が鳴り、司令塔の町田瑠唯は仲間の叫び声を聞きながら泣いた。入団13年目、自身4度目のファイナルで初制覇。「やっと優勝できました」。162センチのPGを上から抱きしめたのが主将の宮澤。「ベンチの活躍が一番重要。チームの勝利です」。一人ずつ応じるはずの場内インタビューにも全員で参加した。

 前日の第2戦に逆転負けで1勝1敗。個の力に頼り、ボールと体を動かす富士通らしさを失っていた。この日は全員が視野を広げ、積極的にアタック。先発4人が2桁得点、途中出場の赤木里帆が12点、中村優花が9点を挙げ、どこからでもリングを射抜いた。まさしく全員バスケ。背景には主将が植え付けた意識がある。

 ENEOSで5連覇した宮澤は移籍3季目。「練習の雰囲気、取り組み方が違う」と常勝球団との差を痛感した。リバウンドやルーズボール1本へのこだわり、客席に負けない声量。常に実戦を想定し、脳内改革から取り組んだ。今季のテーマは「オーバーコミュニケーション」。試合も練習も、言いすぎなくらい声をかけ合った。

 年齢や出場時間は関係ない。「全員が同じ方を向いて、同じ気持ちで練習していかなければならない」。キャプテンはコート外でも小言を繰り返した。飲み物の片づけなども徹底。「プライベートも試合に出る。気を使えない選手はディフェンスもできない」。自分の行動が他人にどう映るのか。仲間への配慮は、やがてチーム愛に変わる。連動する富士通バスケを生み、全員が「このチームは優勝できる」と思えた。

 中村と宮澤に続き、今季は日本代表主将の林咲希がENEOSから加入。生え抜きの町田は「チームとして何をすべきか、優勝のために何が必要か伝えてくれた」と優勝経験者の3人に感謝した。プレーオフMVPに輝いた宮澤も「いいチームになった」と感慨深げ。全員で噛み締めたからこそ、16年ぶりの歓喜は何倍にも膨れ上がった。

(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro-Muku)