埼玉南東部に位置する吉川市は、水辺や田園などが広がる自然豊かな街です。1973年に国鉄(現JR)武蔵野線が開業し吉川団地が建設。人口が増加し1996年に吉川市として市制がスタートしました。2012年には、吉川美南駅が開業し商業施設がオープンするなど新たな街づくりも。今回は、吉川市の魅力と住宅事情について紹介します。

吉川美南駅の住宅街区の街並み(筆者撮影)

舟運と「なまず、うなぎ」の川魚料理で栄えた街が、鉄道の開業とともに発展

中川(筆者撮影)

吉川市は、東に江戸川、西に中川が流れる総面積31.62平方キロメートルのまちです。ほぼ平坦な地勢で、東は千葉県野田市と流山市、西は埼玉県越谷市・草加市、南は三郷市、そして北は松伏町と接しています。江戸時代初期には、河岸付近に川魚料理を売り物にした料亭が軒を連ね「吉川に来て、なまず、うなぎ食わずなかれ」とも言われたようです。中川を利用した舟運が盛んで、河岸は大正末期まで資源の集積地として栄えました。その後、1955年に旧吉川町、旭村、三輪野江村の1町2村が合併し、「新吉川町」が誕生しました。

吉川市の位置図(出典:吉川市都市計画マスタープラン)

1973年に国鉄(現JR)武蔵野線が開通し、吉川駅が開業。吉川団地の整備などによって、1975年には人口が3万人を上回りました。1996年4月1日に人口5万3,443人の街として、吉川市の市制がスタートしました

2012年には、JR武蔵野線吉川美南駅が開業。ここには旧日本国有鉄道の貨物列車専用の武蔵野操車場の跡地があり、吉川市内の15.9ヘクタールの大規模開発エリアが住居エリア、商業エリアとして開発されました。分譲マンションや戸建て住宅が供給されるとともに、イオンタウン吉川美南などの商業施設がオープン。にぎわいある街として大きく姿を変えました。

吉川美南駅のイオンタウン吉川美南(筆者撮影)

2018年には、きよみ野に新市庁舎が完成。1996年の市制施行時に5万3,443人だった人口は、2024年4月1日時点で7万2,580人へと増加し、世帯数 3万2,056世帯を誇る街へと成長しています。

吉川市の将来都市構想図(出典:吉川市都市計画マスタープラン)

【吉川市のデータ】
総面積…31.62平方キロメートル
人口…7万2,580人
世帯数…3万2,056世帯
※2024年4月1日時点

自然環境、街並み、治安…吉川市には住みやすい要素がたくさん!

吉川市役所の新庁舎(筆者撮影)

吉川市を訪れて感じるのは、住宅地の街並みがとても美しいこと。吉川団地の誕生以降、土地区画整理事業を中心に市街地が計画的に整備されており、幹線道路の歩道も広く歩きやすい場所が多いのが特徴です。国鉄(現JR)武蔵野線吉川駅の開業が1973年と鉄道敷設がほかの地域と比べると遅く、秩序ある市街化が進められたからでしょう。

吉川市の住み心地【経年変化】(出典:令和5年度吉川市市民意識調査報告書)

吉川市市民意識調査によれば、吉川市が誕生した1996年以降「住みよい・どちらかと言えば住みよい」と答えた人が8割前後で推移。直近の2023年の調査では、過去最高の85.8%の人が「住みよい・どちらかと言えば住みよい」と答えています。

きよみ野の住宅街にある歩道(筆者撮影)

住みやすい理由のなかで「自然環境の多さ」は最も評価が高く、86.3%の人が挙げています。都市計画基礎調査(令和2年基準)によれば、吉川市全体の 33.6%が田、7.6%が畑で、市街地周辺で緑豊かな田園風景が広がっています。また、水面が3.8%を占め、水に恵まれた吉川市の特徴を示しています。

市行政区域全域が都市計画区域に指定されており、市街化区域面積は全体の23.7%にあたる749ヘクタール。一方、市街化調整区域は 2,417ヘクタールと76.3%を占めています。市街化を計画的に進めることによって、住宅と生活関連施設がバランスよく整備されています。

吉川市の住み心地を「よい」と感じる理由(出典:令和5年度吉川市市民意識調査報告書)

吉川市では、市政スタートの4年後となる2000年に吉川市の都市計画に関する基本的な方針となる「吉川市都市計画マスタープラン」が策定されています。この計画に基づき、「土地区画整理事業による質の高い住宅地整備」「幹線道路の整備」「吉川美南駅の開業」などに取り組み、快適で住みよいコンパクトな都市づくりを進めています。

きよみ野の住宅街(筆者撮影)

吉川市の街づくりに代表されるのが、1995年から分譲がスタートした「吉川きよみ野」です。「人にやさしい街づくり」をタウンコンセプトに街区をゾーニング。総面積約62.6ヘクタールのうち宅地が31.8ヘクタールで、戸建てやマンションなどの住宅が建てられています。

吉川市きよみ野の公園(筆者撮影)

統一感ある街並みを醸成するために、景観に配慮した住宅を供給。2018年3月には、きよみ野地区内に吉川市新庁舎が完成。街区内には永田公園やテニスコートなどもある吉川運動公園が位置し、憩いの場も豊富にあります。吉川市誕生と同じ頃に入居がスタートしており街が比較的新しく、美しい街並みが続いています。

吉川運動公園(筆者撮影)

吉川市市民意識調査では、住みやすい理由として自然環境の多さに次いで、街並み(景観)や治安などが上位に挙げられています。「土地区画整理事業による質の高い住宅地整備」によって、街並みだけでなく自治活動など近所づきあいのあるコミュニティが形成されているからでしょう。

見通しの良いきよみ野の街並み(筆者撮影)

吉川市道路網方針図(出典:令和4年 吉川市都市計画マスタープラン)

吉川駅、吉川美南駅周辺を除いて、きよみ野地区など多くの住宅地はバス便エリアになります。吉川市役所などの公益施設を中心にバス路線が用意されており、通勤・通学で電車を利用する人は駅アクセスにバスなどを利用しています。

沼辺公園(筆者撮影)

吉川駅や吉川美南駅のあるJR武蔵野線は、府中本町方面と西船橋方面を結ぶ環状の沿線。吉川駅から2駅の南越谷駅で東武スカイツリーライン新越谷駅へ乗り換え北千住駅を経由し、都心と結ばれます。吉川美南駅からは、3駅先の南流山駅でつくばエクスプレス線に乗り換え、秋葉原駅へ直結します。通勤利便性の良さは、吉川市の魅力といえるでしょう。

吉川駅前(筆者撮影)

JR武蔵野線沿いには、イオンレイクタウンのある越谷レイクタウン駅。新三郷ららシティなどの大型商業施設のある新三郷駅があり、オフタイムの買い物も便利。車でのアクセスも良好なので、家族のお出かけも便利です。新三郷駅、越谷レイクタウン駅は、吉川市の隣接エリア。大規模な商業施設がある街への良好なアクセスも、吉川市の大きな魅力です。

越谷レイクタウン駅にあるイオンレイクタウン(画像素材:PIXTA)

日常の買い物は地元の商業施設で済ませ、休日は家族そろって新三郷や越谷レイクタウンへ。吉川市をホームタウンとして、豊かなライフスタイルが実現できそうです。

吉川美南駅前に大規模商業施設が誕生 商業モールも

2012年のJR武蔵野線吉川美南駅開業に伴い、2013年にイオンタウン吉川美南が開業しました。ANNEX、西街区に続き、2021年には東街区がオープン。フードコートや温浴施設など、暮らしをサポートする多彩な施設が入っています。吉川美南駅前の住宅街区では、ワンストップで買い物や食事、レジャーを日常的に楽しむことが可能です。

ウニクス吉川(筆者撮影)

吉川駅前には、スーパーマーケット「ライフ」が立地。吉川駅と吉川市役所のほぼ中間には、食品スーパーやホームセンター、クリニックなどが入る商業モール「ウニクス吉川」が立地します。車での移動はもちろん、フラットな地勢で自転車の移動もスムーズなので毎日の買い物もしやすいでしょう。

きよみ野のマンション群(筆者撮影)

吉川市の住宅事情ですが、新築マンションの分譲は限られており、近年は吉川美南駅の駅前街区が中心となっています。築年数の浅い3LDKタイプの中古マンションが3,000万円台で購入可能です。中古マンションについては、吉川駅周辺は築浅の中古マンション流通は少なく、築年数の経過したマンションが2,000万円台で検討できます。価格重視なら、中古マンションに目を向けるのも良いでしょう。

吉川美南駅のマンション群(筆者撮影)

新築戸建ては、吉川美南駅徒歩圏は敷地面積が広く地価も高いため6,000万円台の物件が目立ちます。一方、吉川駅では既成市街地内で4,000万円台の供給が目立ちます。予算重視なら吉川駅で探すのも良いでしょう。

吉川美南駅の東口の街づくり(筆者撮影)

吉川市で注目したいのは、吉川美南駅東口で進行中の「吉川美南駅東口周辺地区土地区画整理事業」。吉川市が施行する事業面積約59.1ヘクタールもの大規模な土地区画整理事業で、駅前の商業・業務ゾーンのほか戸建住宅ゾーンや公園・緑地、産業ゾーンなどが整備されます。

吉川美南駅東口周辺地区 土地利用計画図(出典:吉川市ホームページ)

計画人口は約4,500人となっており、戸建て分譲が行われる予定です。現在、道路整備などが行われており、将来の街づくりに期待が膨らみます。

次に、吉川市のおすすめの街「吉川美南駅」を紹介します。

土地区画整理事業でさらに街が発展の吉川美南駅

イオンタウン吉川美南(筆者撮影)

吉川市のおすすめの街として挙げられるのが、吉川美南駅です。2012年の吉川美南駅開業以降、イオンタウン吉川美南などの商業施設の開業と分譲マンション、新築戸建ての分譲など、着実に街づくりが進んできました。

吉川美南駅の戸建街区(筆者撮影)

吉川美南駅西口に誕生した住宅街区は歩道がしっかり整備され、高齢者や子育て層も歩きやすくなっています。マンション外構の植栽など景観にも配慮されており、美しい街並みが形成されています。何といっても大型商業施設が身近にあるので、ワンストップで買い物や食事などが済ませられるのもうれしいポイント。美南中央公園などの憩いの場もあり、タイムパフォーマンスはかなり良い街といえるでしょう。

大型商業施設が駅前に集まるJR武蔵野線の利点を享受できるのも魅力。隣駅の新三郷駅にはららぽーと新三郷やコストコホールセール新三郷倉庫店、IKEA新三郷など大型商業施設が豊富です。

吉川美南駅西口(筆者撮影)

吉川美南駅東口の土地区画整理事業が進めば、居住人口の増加とともに生活関連施設も増えそう。街の将来性も期待できると思います。

吉川美南駅東口の整備中の街路 2024年2月撮影(筆者撮影)

吉川美南駅では、中古マンションが値ごろ感ありおすすめです。駅前の70平米台の3LDKタイプが4,000万円台で流通し、中には3,000万円台の物件も。子育てファミリー層でも手が届きやすくなっています。

便利で自然豊富、暮らしやすい吉川市

江戸川や中川など自然が豊かで暮らしやすい吉川市ですが、留意したいのは洪水リスクです。ほぼフラットな地勢のため、中川や江戸川が洪水になった場合、浸水域が広範囲に及びます。吉川市では、吉川市洪水ハザードマップを公開していますのでよく確認しましょう。

吉川市内の住宅街(筆者撮影)

吉川市は、隣接する三郷市や越谷市と比べ東京都心へのアクセスがやや劣りますが、その分価格はリーズナブル。土地区画整理事業による美しい街並みは、住み心地を高めるでしょう。吉川美南駅の東口エリアの開発など街の発展が見込める吉川市。子育てファミリーにおすすめです。

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