見物に来た人たちが「えっ」と見上げている。岐阜県高山市荘川町中野にある県の天然記念物「荘川桜」。ちょうど満開を迎えているはずの2本の巨木に、今年は花がほとんど見られない。

 荘川桜は、樹齢500年といわれるアズマヒガンザクラ。1960年、御母衣(みぼろ)ダムの建設で水没することになった二つの寺からダム湖畔に移植された。

 枝に近づいてよく見ると、淡いピンクの花をぽつぽつとつけているが、その数が例年より極端に少ない。

 「もうちょっと咲いているといいのに。残念です」と、一眼レフカメラを持って愛知県西尾市から訪れた男性(67)。

 「花びらが落ちていませんねえ」と可児市の母娘。木の下を見ても、咲き誇ってから散ったような形跡はない。

 荘川桜公園を管理する高山市によると、例年は4月下旬から5月初めごろに見ごろを迎える。今年は4月18日から咲き、本来ならもう満開だ。

 ところが、野鳥のウソが花芽を食べに食べて、花の数が激減したという。3月下旬ごろには、ウソがついばんだとみられる花芽の食べかすが木の下に散乱しているのが見つかった。

 過去にもウソの食害に遭ったが、この20年ほどは大きな被害はなかったという。周辺の桜も花芽は少なく、「いままでにない被害です」と市荘川支所の職員は言う。

 27日から3日間、夜間にライトアップするが、ほとんど緑の葉を照らすことになりそうだ。(荻野好弘)