環境省から国の特別天然記念物・トキの放鳥候補地に選ばれている島根県出雲市は、放鳥時期について、2027年度とする独自目標を設定した。市はトキの飼育と繁殖に取り組んでいるが、今後はねぐらや営巣に適した森林の整備を進めたり、環境に配慮した農業の普及に努めたりするという。

 トキは、繁殖拠点のある新潟県佐渡市のほか、出雲市など全国4カ所で分散飼育されている。

 市では、11年からトキ分散飼育センター(西新町2丁目)で飼育を開始。市によると、昨年末までの産卵数は212個で、このうち64個が孵化(ふか)し、58羽の幼鳥を佐渡に送り届けた。

 22年には、放鳥できる要件を満たしているとして、石川県(能登地域9市町)とともに環境省から「トキの野生復帰を目指す里地」(放鳥候補地)に選ばれた。

 環境省は放鳥時期を早くて26年度としているが、市はこのほど、「市トキによるまちづくり構想」のアクションプラン2025で、放鳥の目標年度を27年度と掲げた。市の担当者は「放鳥に備え、どれだけのエサがあるかを調べる資源調査などが必要で、早くても27年度が現実的と考えた」としている。

 アクションプランでは、独自目標の達成のため、「市民の環境意識の向上」「環境にやさしい農業の普及」「豊かな生態系の再生」など五つの基本目標を設定。重点的に取り組む事項として、市民にトキの放鳥を心待ちにしてもらえるようシンポジウムの開催やファンクラブの設立に取り組む▽有機農業などの普及が可能な農業技術体系を確立する▽トキの餌場確保に向け、農業者らの理解醸成に努める――などを明記した。(石川和彦)