高崎市タワー美術館(群馬県高崎市)で開催中の企画展「千年を描く」では、太宰府天満宮(福岡県太宰府市)のために10年がかりで描かれた24面の襖(ふすま)絵の原画などが展示されている。作者で現代日本画界を代表する神戸(かんべ)智行さん(49)が、展示会場で作品を紹介しながら制作の狙いなどを語った。

 襖絵は、2027年に天満宮の祭神菅原道真公が死去してから1125年を迎え、大きな節目となる式年大祭の記念事業として、天満宮が制作を依頼した。天満宮境内に約6千本ある梅や池の水面に映る木々、鳥やコイなど生き物たちの姿が描かれている。

 「天満宮の自然がモチーフ。実際に天満宮で見つけた生き物や植物を描いています。描く際に使った水は、天満宮の天然の水を使いました」

 襖絵が飾られる天満宮文書館の庭では、平安時代の宮中行事を再現した「曲水の宴」が行われる。その舞台となる小川をモチーフにした作品もある。

 「曲水の形を線で描いています。文書館から座って見たときと同じ目線の高さで見えるようなイメージで描いています」

 会場には東日本大震災の復興支援で描いた作品も展示されている。神戸さんが和紙を切り抜いて作った花びらを、来場者が1枚100円を払って貼り付け、神戸さんが彩色して完成させた。集まった参加費は寄付にあてた。作品は様々な色の金魚たちが花びらの間を泳いでいるような構図だ。

 「金魚は、いろんな種類があっても仲が良い。いろんな人種、黒人や、白人、黄色人がいたり、いろんな考え、宗教、肌の色があっても、みんな仲良く。その思いをずっとつなげていこうと、描いた作品です」

 人間は自然の中で一緒に生きていくもの、というメッセージだという。

 企画展は23日まで。その後、岐阜県美術館(7月6日〜9月8日)、新見美術館(岡山県、9月15日〜11月24日)で巡回展が開催される。襖絵は2027年、天満宮の文書館で公開される予定だ。(角津栄一)