京都・祇園祭をめぐり、京都市観光協会は20日、前祭(さきまつり)の山鉾(やまほこ)巡行(7月17日)で設置するプレミアム観覧席について酒と食事を提供しないと発表した。八坂神社(京都市東山区)の野村明義宮司が酒や料理の提供に反対し、席を売る市観光協会の理事を辞任する意向を示していた。野村宮司は意向が受け入れられたとして、理事の辞任を取り下げた。

 プレミアム観覧席は、市観光協会が昨年から販売を始めた。昨年は1席40万円で、酒やおばんざいなどを提供。今年は1席15万円などで販売しているが、野村宮司は「祭りは疫病を鎮めるための神事。ショーではない」と酒や料理の提供に反対していた。

 この日、八坂神社であった祇園祭についての記者会見で、市観光協会は神社側と協議し、ソフトドリンクのみを提供することに決めたと説明した。かき氷などの軽食も出さない。プレミアム観覧席の価格は変えず、購入者に速やかに連絡するという。

 野村宮司は「今後、いい祇園祭にしていきたいということで意見が一致した。これからどんなプレミアム観覧席にするか互いに調整していきたい」と話した。

 また、今年の祇園祭では、八坂神社は祇園祭を本来の形に戻そうと、比叡山延暦寺(大津市)と神仏習合の儀式「八坂礼拝講(らいはいこう)」を営む。祭りの期間中の7月20日に本殿で神職と延暦寺の僧侶が疫病退散や国家安寧、世界平和を祈る。

 八坂神社はかつて延暦寺の末寺で、「祇園感神院(かんしんいん)」と呼ばれ、神仏習合の祈りを捧げていた。延暦寺との合同の儀式は2005年3月以来という。野村宮司は「昔の信仰の姿に少しでも戻したい。今後も続けていきたい」と話した。(西崎啓太朗、武井風花)