約200年前の江戸の姿を描いた「江戸一目図屛風(ひとめずびょうぶ)」が津山郷土博物館(津山市山下)の企画展で5月6日まで公開されている。屛風が描かれたのは1809(文化6)年。鳥になって空から見渡すような構図で描かれ、東京スカイツリーの建設地選定で資料の一つになったことで知られている。

 作者は江戸後期に浮世絵師から津山藩のお抱え絵師になった鍬形蕙斎(くわがたけいさい)(生年不詳〜1824)。博物館によると、屛風は鳥瞰(ちょうかん)図の傑作で、県の重要文化財に指定されている。縦176センチ、横352.8センチ。隅田川の東側から見下ろしたように眼下に城下町、その背後に富士山がそびえ立つ。中央には現在の東京駅あたりにあった津山藩邸。また雷門で有名な浅草寺や大勢の人でにぎわう両国橋、日本橋、遊郭の新吉原なども描かれている。大名行列や花見をする姿からは、江戸の生活ぶりが生き生きと伝わってくる。

 当時は飛行機もドローンもない。蕙斎は江戸を歩き回って想像して描いたとされる。同じ時代には浮世絵師の葛飾北斎が活躍していたが、「北斎嫌いの蕙斎好き」という言葉もあったほど人気の絵師だったという。

 描かれた景色はスカイツリーの展望台からの眺めに重なる。博物館ではスカイツリーで荒天時に放映されてきた映像「江戸一目図漫遊記」も見ることができる。屛風に描かれた人物や舟が動き、江戸時代の生活ぶりが紹介されている。

 スカイツリーには屛風のレプリカが、2012年の開業と同時に設置されていた。だが、展望台の模様替えに伴い、津山市が無償で譲り受け、市役所で常設展示されている。

 同館での屛風の公開は1年ぶり。今回の企画展「江戸一目図屛風実物展示―蕙斎ワールド2024」では、蕙斎が1810年に約1年間、津山に滞在したときに描いた「津山景観図屛風」など蕙斎の作品が計9点展示されている。

 小郷利幸館長は「江戸一目図屛風は県指定重要文化財のため展示日数が限られ、ぜひこの機会を逃さず実物の雰囲気を味わってほしい」と話している。

 開館時間は午前9時〜午後5時(入館は同4時半まで)。入館料一般300円、高校・大学生・65歳以上200円。企画展が開催されている5月6日までの休館日は、4月22日、30日、5月1日。問い合わせは津山郷土博物館(0868・22・4567)へ。(礒部修作)