【大阪】泉北ニュータウンに広がる堺市南区内の自治会広報紙が300号を突破した。刊行のきっかけは28年前に起きた大規模な食中毒。紙面は子育て世代が目立った創刊時から、高齢の世帯が増えている現在へと、街の移り変わりも映し出してきた。

 広報紙は「好きやねん 御池台ニュース」。御池台校区連合自治会が、変形A3サイズ1枚の表と裏に自治会行事の報告や予定を掲載し、毎月第2土曜に3100部を発行している。

 記念すべき300号の発行は今年2月。トップ記事は、連合自治会長の戎谷(えびすたに)悦子さん(77)ら1997年6月の創刊時の編集スタッフ3人による記念座談会だった。

 発行責任者の戎谷さんは、座談会で「発行日の午前中まで最終校正をしているので、最新の出来事を記載できます」と発言していた。

 ニュースへのこだわりには、わけがある。

 創刊前年となる96年の4月。戎谷さんは、連合自治会の前会長から「引き受けてくれる人がいない」と頼まれ、後任の会長に就任した。それまで役員の経験もなく、「なぜ、主婦の私がいきなり?」と戸惑った。

 この年の約3カ月後の7月、市内で病原性大腸菌O157の集団食中毒が発生した。学校給食を食べた児童が発熱や下痢などの症状を訴え、患者は児童7892人を含む9523人にのぼった。「市や小学校から急に休校の連絡などが来て大変だった」と戎谷さん。

 回覧板だと、連絡事項を周知するまでに時間がかかることもある。戎谷さんは「御池台で今起きていることを住民に一斉に知らせる広報紙が必要」と痛感した。

 地元の小中学校や幼稚園で食中毒対策を取材し、詳細に紹介した広報紙「ストップ!!O―157」を緊急に発行。O157を正しく理解し、冷静さを保つよう呼びかけた。

 78年に入居が始まった御池台。97年に広報紙を創刊したころは核家族を想定し、「子育てで孤立感を深める母親のために」と、交流の場を紹介する記事を掲載した。

 2000年2月には、発行を3カ月に1回から毎月1回に増やし、ニュースの速報性を高めた。300号には物忘れ予防教室、健康マージャン、筋力アップ教室といった高齢者対象の行事予定が並ぶ。

 御池台校区連合自治会は子ども向けのイベントも重視してきた。5月18日には、大谷翔平選手寄贈のグラブを使ったキャッチボール体験の場などを設ける。

 戎谷さんは毎号「思うこと」と題したコラムを執筆している。4月発行の302号に、こんな決意を書いた。

 「『どんな人も住み続けられる御池台』を目指して『しんどいなぁ』と想(おも)う事(こと)もありますが、子育て世代が引っ越して来たくなる『街づくり』に頑張りたいと思います」

 広報紙のタイトルで「好きやねん」とうたう通り、地域への愛着が感じられる紙面づくりを心がけながら、400号の達成をめざす。(辻岡大助)