レフェリーとして憧れのワールドカップ(W杯)へ。静岡市観光交流局に勤務する一木千広さん(29)=同市葵区=が本年度、静岡県内で女性初のサッカー国際審判員に選ばれた。「2027年の女子ワールドカップブラジル大会のピッチに立って、審判員の裾野を広げたい」。性別に関係なく「厳正さ」を求められる世界の最高峰で、一層の奮闘を誓う。
 日本人の女性国際審判員は現在8人で、一木さんは最年少。常葉大在学中に国内最高ランクの女子1級審判に合格してWEリーグなどで経験を積み、日本サッカー協会の選考を経て国際サッカー連盟の承認を受けた。
 WEリーグでは主審も務めたが、国際審判員として推薦を受けたのは副審。ピッチ内を自由に走り回る主審に対し、ライン際でオフサイドなどを判定する副審は選手の動きに合わせて常に正しい位置取りをしないと信用されない。「難しさがあり、主審の魅力も捨てきれず悩んだ」
 自身も磐田北高時代まで選手としてプレーしたが、プロになる才能はないと見切りを付け、審判員の道を選んだ。「選手としては絶対に立てないピッチ。チャンスがあるのなら携わりたい」。周囲と相談した上で、最後は「与えられた場所で、自分で努力するしかない」と決断した。
 自身の判定だけでなく、無線のコミュニケーションシステムを使って主審をサポートするのも副審の役割。「見たこと全てではなく、要点を適切なタイミングで伝える必要がある」。国内の試合でも大舞台を見据えて研さんを積み、今夏にはアジア各国の国際審判員を対象にマレーシアで開催される研修会に参加する。
 審判員は知識と技術に加えて選手並みの走力も求められ、仕事をこなしながら連日走り込みを行って体力を維持する。夫の理解もあり、「体の動く限り、子どもを産んでもレフェリーを続けたい」。女性審判員のフロンティアを、この先もずっと歩む覚悟を固めている。

 いっき・ちひろ 磐田市出身。静岡市の中学で保健体育の教諭を務め、4月から指導主事として同市観光交流局へ。仕事と審判員活動を両立する。常葉大在学時には外務省事業で約1年間、メキシコに留学しスペイン語を学びながら審判技術を磨いた。