木下拓哉

 チーム成績のスタートはロケット、しかし個人はスローだった。開幕から10試合、21打席連続無安打。4月10日のDeNA戦(横浜)でようやく快音を響かせた。

 1点リードの2回、先頭でDeNA先発・小園健太の変化球をすくって中前へ。これがようやくの今季初安打だった。

「1本1本、積み重ねていきたいです」。動画解析するスコアラーと食事をともにし、並んで動画を見て、時には自宅と球場の車内も一緒。映像と感覚のギャップを埋めたくて仕方なかった。

 安打が出たのは、もしかしたら元チームメートのいたずらもあったのかもしれない。初安打の当日、横浜スタジアムに到着した木下は、元竜戦士・京田陽太の車を見つけた。

 フロントドアにA4用紙で木下へのメッセージが貼ってあった。「キノタク 頑張れ!」。両選手は家族ぐるみの付き合い。かつてのチームメートのいじり。「あいつ、ふざけているでしょ」。しかし励まされたら嫌な気はしない。リラックスして打席に立ち、Hランプを灯した。

 宇佐見真吾や加藤匠馬がスタメンの試合もあるが、柱は木下。チーム順位には素直に喜びがあるものの、打率1割台に低迷する何とももどかしい日々を過ごしている。

「大事なところで打てればいいんです。タイミングをとれるように頑張ります」。基本は守り。プラスαで打てれば、言うことはないのだが……。

 国内FA権の取得イヤー。勝ってこそ評価されるのが捕手。チームの順位も、個人の評価も押し上げ、球界に捕手・木下ありをとどろかせたい。

写真=BBM