指導スタッフが新体制に



1Hondaはスポニチ大会で3度目の優勝。甲元野球部長[右]は表彰式後、戦いを終えた多幡監督[左]を労った[写真=矢野寿明]

 第78回JABA東京スポニチ大会の決勝が3月14日、神宮球場で行われ、Hondaが日本通運を下し、5大会ぶり3度目の優勝を飾った。

 Dブロックに入った予選リーグで3連勝を遂げると、14日のセガサミーとの準決勝では先発した入社7年目左腕・東野龍二(駒大)が1失点完投勝利。試合終了から48分後にプレーボールした日本通運との決勝では、11安打の猛攻で圧倒。7対0の8回コールドで、2018年以来の頂点に立った。Hondaは今秋に開催される社会人日本選手権の出場権(2大会連続25回目)を手にしている。

 MVPには日本通運との決勝で6回無失点と好投した、入社5年目のサウスポー・中村伊吹(白鴎大)が受賞。予選リーグ2試合を通じて、計3戦で12回無失点と安定感ある投球を披露した。「八番・中堅」で全5試合に先発出場した大卒ルーキー・金城飛龍(東海大)が決勝で2打点をマークするなど、打率.316の活躍で新人賞を受賞している。

 Honda硬式野球部は2024年シーズン、2つの大きな変化があった。1960年に「本田技研」として創部。都市対抗野球には67年の初出場から計37回出場で、優勝3回(96年、09年、20年)を誇る強豪である。チームの所属が昨年までの埼玉県野球協会(都市対抗は南関東地区予選で、寄居町・小川町として出場)から東京都野球連盟へ。日本野球連盟は1月11日に「所属変更」を受理し、今年の都市対抗予選は東京地区予選(代表枠4)に出場する。今大会、JABAスポニチ大会決勝では、昨年まで南関東地区のライバル・日本通運を下したのだった。

 指導スタッフも新体制となった。甲元訓部長(法大)が就任。昨年まではHonda、Honda鈴鹿、Honda熊本野球部の三事業所統括GMだったが、Hondaの部長も兼務することとなった。甲元部長は本田技研鈴鹿の右腕エースとして、1994年の都市対抗優勝。12年から18年までHonda鈴鹿を監督として率い、19年から統括GMを務めている。銅メダルを獲得した昨年のアジア競技大会(中国・杭州)では、侍ジャパン社会人代表コーチを歴任。現場に精通し、なおかつマネジメントに長け、今大会は新部長として早速、成果を収めた。

 チームを指揮したのはヘッドコーチから今季、監督に昇格した多幡雄一氏(立大)である。

 多幡氏は星稜高(石川)を経て、立大では右の強打の外野手、二塁手で活躍。東京六大学リーグでは外野手で3度のベストナインを受賞した。通算12本塁打。4年秋(04年)にマークした21四死球はシーズン最多記録だ。

 05年にHonda入社後は、09年の都市対抗優勝を経験し、16年限りで現役を引退した。三塁手として3度の社会人ベストナインを受賞し、社会人日本代表の主将として、社会人野球界をけん引した。社業を経て20年にHondaのコーチに就任し、開田成幸前監督(早大)を支え、同年に11年ぶりの都市対抗優勝を遂げた。22年からヘッドコーチとなり、満を持して監督就任となったわけだ。

 多幡監督には豊富なキャリアに裏付けされた指導力に加えて、リーダーとしての資質が備わっており、人としての包容力もある。選手、コーチ、監督として都市対抗制覇が目標。「ミスター・Honda」が率いる東京参戦元年、4年ぶりの黒獅子旗を貪欲に狙っていく。