「#座ってちゃダメですか」というプロジェクト名で、スーパーのレジなど立ち仕事にイス設置を求め、活動する学生や会社員たちがいる。メンバーは5月24日、労働安全衛生規則のうち、立ち仕事に関する規則の具体化や周知などを求め、厚生労働省に要請書を提出した。(ライター・国分瑠衣子)

●「長時間立っていると足がこわばります」

プロジェクトのメンバーで大学4年生の茂木楓さん(22)は立ち仕事の辛さをこう話す。

「長時間立っていると足がこわばります。周りには体がきついとマッサージに通っている人もいます」

留学費用をためるため、2021年春から大手スーパーのベイシアでアルバイトを始めた。今は週1回だが、多い時には週に3回、一日4時間ほど働いていた。レジにイスがないことに疑問を持ち、2022年から首都圏学生ユニオンを通じ、会社と交渉中だ。

労働安全衛生規則(厚労省の省令)では、事業者は立ち仕事の労働者が、就業中座ることができる機会のあるときは、労働者が利用することのできるいすを備えなければならないと定めている。

厚労省の担当者に立ち仕事の実態を説明するメンバーたち

●厚労省「スーパーの関係団体などにヒアリングしたい」

この日、茂木さんらが厚労省の担当者に求めたのは3点。(1)イスを設置する具体的な事例集の作成 (2)各事業所が省令を実践できるよう周知の徹底 (3)省令で想定する職種範囲の明示

要請に対し、厚労省の担当者は「非常に大切な指摘で、重く受け止めています」と立ち仕事の大変さに理解を示した。その上で具体的な事例集については「まずはスーパーの関係団体などに実態のヒアリングを想定しています」と回答した。職種の明示については、逆に対象範囲を狭めてしまう恐れがあるため、難しいとした。

担当者の回答に対し、メンバーは「ヒアリングでは経営者だけではなく、労働者や消費者の声も聞いてほしいです」などと要望した。

●「電車で座れない日は絶望的な気持ちになる」

立ち仕事をする当事者たちも実態を説明した。

コスメショップの社員、坂本雅咲さん(27)は週5日、1時間の休憩を挟み計8時間働く。レジ、商品の陳列、接客などを行う。立ちっぱなしで足がパンパンになり、クッション性があるスポーツシューズが欠かせない。

「片道30分かけて電車で通っていますが、電車で座れない日は絶望的な気持ちになります」

コンビニで働く清水文美さんは、イス設置を求め上司に企画書を提出しているという。「座れる環境があることは、体だけではなく、精神の健康のためにも大切だと思います」と話した。

茂木さんたちの活動は注目され、まだ一部ではあるがスーパーなどでイスを置く動きは出ている。大手も試験導入をスタートしていて、ドン・キホーテは4月から浅草店など一部店舗でイスを設置している。