県内の外国人住民は約6万2500人で総人口の約3・6%を占める。県全体で少子高齢化が進む一方で、外国人住民は増えている。鈴鹿市の坂本久海子さん(62)は、日本人と外国人が互いを認め合い、共に地域をつくる多文化共生社会を目指し、外国人支援に取り組んでいる。 (服部壮馬)

 夫の仕事で1993年から約5年間ブラジルに滞在した。そこで感じたのは、生まれ育った日本とのギャップ。サッカーW杯の開幕日には、多くの学校や企業が休みになるなど、文化や制度がずいぶん違う。「当たり前と思っていたことが、当たり前ではなかった」と気付いた。

 日本では90年の入管難民法改正により、日系3世までの定住資格が認められたことから、就労で来日する外国人が急増した。県内でも製造業が盛んな北中勢地域を中心に多くの外国人が移り住んだ。

 坂本さんはブラジルから帰国後、鈴鹿市の小学校で外国にルーツのある子どもたちに日本語や算数などを教えてきた。外国人の子どもたちは、親が日本語を話せなかったり、家庭での教育が十分でなかったりすることで、日本で生きづらさを感じやすい。「学校だけでなく、社会で支えていく仕組みが必要」と考え、2005年にNPO法人「愛伝舎」(四日市市)を設立した。

 愛伝舎の活動は、多岐にわたる。外国人と医療機関をつなぐ電話通訳をはじめ、公営住宅に入居する外国人にゴミ出しや騒音など生活マナーの説明、リーマン・ショックで失業した外国人の介護人材育成…。不安定な雇用形態や文化の違いに戸惑い、言語の壁に困っている外国人住民の駆け込み寺となっていた。

 NPO法人の設立後も、県内に住む外国籍の子どもたちの進学を支援する「夢の懸け橋奨学金」の創設や、東海3県の市民団体でつくる「外国人支援・多文化共生ネット」の立ち上げに携わった。地道な活動が評価され、現在は大手企業や県教育委員会、出入国在留管理庁などとも連携し、外国人支援の輪を広げている。

 県内の人口は07年の187万人をピークに減少し、現在は172万人。一方で、外国人住民は約6万2500人で10年前に比べ、約1・5倍に増えている。今後、外国人住民の存在感がさらに高まることから「日本人と外国人が一緒に地域を支えていくことが求められる」と語る。

 目指す社会像は、ラグビー日本代表の「ONE TEAM(ワンチーム)」。「生まれた国や育った環境が異なっても、地域で共に生きる仲間として、より良い社会を作っていくことが、これからの日本をつくる」。国籍の異なる選手たちが、日の丸を背負って戦う姿になぞらえた。

 さかもと・くみこ 1961年7月生まれ。静岡県出身。明治学院大社会学部卒。6歳と4歳の2人の孫がいる。日常会話レベルの英語とポルトガル語が話せる。好きなロックバンドは英国の「クイーン」。