地域住民らが持ち寄った図書1500冊以上が並ぶ「まちかど文庫」が26日、常滑市奥条の旧タイル工場内の一角にオープンする。運営するのは、市民グループ「常滑の図書館のあり方を考える会」。2年半前に市中心部から図書館が消滅したのを受け、人や本との出会いの場として週2日間開設することにした。初日はオープニングイベントも開く。 (渡辺大地)

 年季の入った築100年近い旧工場。一角に並べた本棚には、会員の蔵書や友人知人らから寄贈を受けた小説や専門書、児童書、絵本などがずらりと収まる。コンクリート敷きの床には畳9枚を並べ、小上がりのような読書スペースも設けた。

 「図書館の代わりとまでは言わないけど、子どもも大人も誰もが気軽に立ち寄れる場所にしたい」。メンバーの浜島京子さんは笑顔を見せる。日曜午前と月曜午後に開き、本の閲覧や貸し出しだけでなく、子ども向けの読み聞かせ会や人形劇も催していく。

 常滑市では2021年9月、市中心部にあった図書館本館が耐震不足で閉館。蔵書は北部の青海、南部の南陵の両公民館と、その後に新市役所内にオープンしたこども図書室に振り分けられた。だが、市中心部など図書施設から遠くなった地域からは「不便」との声も根強い。

 会は21年4月に結成。現在は約30人が所属し、これまでに図書館の早期整備を市に要望したほか、講演会や他の図書館視察を通じて見識を深めてきた。まちかど文庫の開設は、メンバーの伊奈泰子さん(75)が自宅敷地内にある旧タイル工場を提供して実現。今年に入ってから、中にたまっていた廃材や不用品を片付け、オープンに向けて準備を進めてきた。

 まちかど文庫の開設を機に、旧工場そのものも「えんとつむぎのおうち」と命名。まちかど文庫の取り組みとは別に、不定期で駄菓子屋を開いたり、コンサートや作品展を催したりする計画を練っている。名称は旧タイル工場に今もそびえるれんが造りの古い煙突と、「縁を紡ぎたい」との願いにちなんだ。

 伊奈さんは「みんなが力を合わせ、ここまできた」と振り返り、「本を読まなくてもいい。お母さんが子育てのぐちを言ったり、疲れた子どもが一人で過ごしたり、誰かにとっての居場所になれば」と話す。

 オープニングイベントは午前9時半〜午後3時。よさこい踊りやウクレレ演奏、人形劇、手品などの出し物がある。住所は奥条5の68で、れんが造りの煙突が目印。近くの大善院の砂利敷き駐車場を利用できる。(問)窓口の浜島さん=090(2268)8876