飛騨市神岡町の木工作家による作品展「木工細工の3人展」が29日〜7月7日、同町船津の旧深山邸で開かれる。作者の1人は、神岡に移り住んでミニチュアを手がけた故寺内二郎さん。いま再び、その緻密な作品に日の目を当てた。生前を知る人は「神岡にとても貢献してくれた。地域に親しまれた作品を見てもらいたい」と思いをはせる。 (坂本圭佑)

 地域のお年寄りの認知症予防のため、気軽に集える場所をつくろうと、住民5人で昨年7月に設立した「和い和い会」が企画した。市が管理する旧深山邸はかつての遊郭や料亭で、これまで街歩きガイドの際に紹介する程度だったが、新たな地域の交流拠点にしようと有効活用した。

 約20年前、70代前半だった寺内さんは、妻の死をきっかけに息子のいた神岡町に移り住み、趣味の木工作品づくりに励んだ。伝統的な家屋や日常生活で使う道具などをかたどったミニチュアは、細かいところまで緻密に再現されている。作品は住民らにも譲り渡され、今でも地域で大切にされているという。

 作品の一部は以前、市に寄贈され、今回は同町の割石温泉で保存していたものを中心に飾った。明かりのともる旧深山邸や、飛騨の里(高山市)の合掌造り家屋など、数多くのミニチュアが並ぶ。作品づくりのアドバイスを受けていたという同会の一人は「気さくな人で、素晴らしい作品を残してくれた。惜しい人を亡くした」と振り返る。

 木彫りの作品を手がける西浦政雄さんは、蜂の巣や魚、鳥といった愛らしい動物などを表現。組み木が専門の岩垣弘憲さんは、明かりがともる置物や水車などといった作品を並べた。3人合わせて大小約300点が邸内を華やがせ、ものづくりの魅力を伝えている。

 同会は家にこもりがちな人にも足を運んでもらい、わいわいと語り合って、お年寄りらの生きがいにつなげようと試みる。堀辺明子代表(65)は「神岡にも手先の器用な男性たちがおり、素晴らしい作品を作っていると知ってほしい。地域で親しまれる旧深山邸の歴史も合わせて感じてもらいたい」と期待した。