◇コラム「ギョロ目でチェック」

 秋から4月に時期を移し、初めての春開催となった今年の日本GP(7日)で、ビザ・キャッシュアップRBの角田裕毅が10位に入賞した。日本人ドライバーとして2012年の小林可夢偉(当時ザウバー)以来となる母国グランプリ入賞を果たせた要因に、「ユウキの素晴らしいドライビングがあった」(チームのジョナサン・エドルズ・チーフレースエンジニア)ことは間違いない。ただし、周りで支えるさまざまな人たちの存在も忘れてはならない。

 その1人がストラテジスト(戦略家)だ。チームは開幕から入賞できるだけの速さがありながら、戦略のまずさでチャンスを逃していた。そこでスタッフの担当領域を見直し、オーストラリアGP(3月24日)からストラテジストを、フランス人のカリーヌ・クリディリッシュからイギリス人のニック・ロバーツに交代させた。

 新ストラテジストは周りの作戦に惑わされず、自分たちのレースをすることを目指した。角田が日本GPで22周目終わりにピットインしたのも予定通り。他の中団勢4台と同時だったことからも、タイミングの正しさが分かる。5台の中で先陣を切ってピットから飛び出し、入賞につなげた。

 もう1人は、今年から角田の個人マネジメントチームに加わったメキシコ人のルイス・アルバレスさんだ。角田は昨年、よりレースに集中するため、かつてジャン・アレジなどのマネジメント役を務めたマリオ宮川さんを個人マネジャーに、高校時代の旧友である平松雄大さんをパーソナルアシスタントにつけた。

 ただ、史上最多の24戦となった今年は、2人だけではカバーしきれない可能性があった。角田は個人的に親しかったアルバレスさんを加えてほしいと、マリオさんに打診。マリオさんも「角田のため」と受け入れ、さらに強化された「チーム角田」で新シーズンに臨んでいた。

 今年に入って角田の成績が安定しているのは、こうしたサポート面の充実も無関係ではない。歴史的な入賞を果たしたレース後、角田はマリオさんと抱き合って感謝を伝えていた。 (尾張正博=F1ジャーナリスト)