【リスボン=ルイス・バスコンセロス】2019年を最後に途絶えているF1ドイツGPが、26年にも復活する可能性が出てきた。国内中堅企業5社で構成する共同事業体が、ホッケンハイムリンクの株式の75%を買い取り、周辺開発を含む多額の投資計画を発表。同年から新規参入するアウディのサポートも期待でき、復活への追い風になりそうだ。実現した場合も毎年ではなく、周辺のベルギー、オランダなどとローテーションを組み、数年おきの開催になるとみられる。

 1951年にニュルブルクリンクで初開催されたF1ドイツGPは、2019年のホッケンハイムリンクを最後に、財政難のため途絶えている。世界中が新型コロナ禍に見舞われた20年には、中止となったグランプリの代替開催をニュルブルクが引き受けたが、名称はアイフェルGPだった。

 ドイツのDPA通信によると、ホッケンハイム買収のために新設された共同事業体は「エモドロムグループ」と呼ばれ、株式75%を550万ユーロ(約9億2300万円)で購入。約2000万ユーロに達するサーキットの全負債を完済することにも合意したという。

 同グループは買収決定を受け、サーキット周辺に今後5〜10年間で最大2億5000万ユーロを投資する計画を発表。「モーターワールド」と名付けられた壮大なプロジェクトは、初期段階だけでもホテルの新設と300人の新規雇用創出を含み、25年後半からの稼働を目指している。

 ドイツGPが途絶えた大きな要因は、公的機関の資金的サポート不足だった。メルセデスは創立125周年、かつ参戦200戦目の節目だった19年こそ援助したものの、20年以降のカレンダー残留に積極的ではなかった。

 だが、26年からはアウディが新たにF1サーカスに加わる。F1は歴史的に参加者がプロモーターを兼ねることを禁じてきたとはいえ、レッドブルのオーストリアGPやホンダの日本GPなどの例外も存在する。アウディが多くの子会社を介して資金を投入し、歴史的なグランプリをカレンダーに戻す可能性は十分にある。

 ホッケンハイムの新オーナーが投資計画を軌道に乗せ、F1運営会社に支払う開催費用の援助を受けられるようになれば、数年以内にドイツGPが復活する。ただ、毎年開催ではなく、ベルギーやオランダ、イタリアのイモラ、スペイン、フランスとともに、欧州でのローテーション開催に組み込まれるだろう。