◇連載企画「月刊シンノスケ」

 中日の小笠原慎之介投手(26)が編集長を務める連載企画「月刊シンノスケ」。第2回の今回は自宅に飾ってあるグラブの中から、えりすぐりのコレクションを披露する。初めて買ってもらった思い出の一品から思い出したくない記憶が残るグラブまで。「グラブ遍歴」とともに小笠原ストーリーを振り返る。

 中日スポーツ読者の皆さん、おはようございます。中日ドラゴンズの小笠原慎之介です。前回登板(4月30日のDeNA戦)で左腕に打球が直撃しましたが、今は次の登板に向かって調整しています。さて、「月刊シンノスケ」の第2回はこれまでの僕の「彼女遍歴」…ではなく「グラブ遍歴」の一端を紹介します。自宅のリビングには20個ほどのグラブが飾ってあります。どれも思い入れは強いですが、その中からいくつかピックアップします。

> まず1つ目は僕が野球を始めてから初めて使ったグラブです。小学2年生の時、おばあちゃんに野球用具店で買ってもらいました。小学低学年が使う物にしては大きく見えるかもしれませんが、当時すでに身長は140センチありました。やっぱり最初のグラブって愛着ありますよね。高校の寮にも持っていき、自主練の時には使ってもいました。今でも家にいる時にはめたりします。

 2つ目は東海大相模高時代の3年夏の甲子園決勝で使っていたこのグラブ。高校の先輩ですでに巨人で活躍していた菅野さんのモデルです。青みがかったユニホームに映えるので、相模のエースはこの黄色のグラブを使うと聞いていました。2011年にセンバツを制した時のエース・近藤さん(正崇、東海大を経てJR東日本東北)も使われていたので、縁起がいいんですよ。

 プロに入ってから使っていたグラブは知り合いにあげた物も多いのですが、このクリーム色のグラブも思い出深いです。5年目の20年シーズン。この年は左肘や左肩の故障から完全復活を目指していたのですが、結果的にプロ入り後で最も少ない1勝。試合に出られないのはつらいことだったけどあの年がなければ今の自分はない。自分にとって縁起はよくないかもしれません。それでもこのグラブにも思い入れがあります。

 21年は8勝10敗で初めて規定投球回に到達。その年はこの黒色のグラブでした。手首が当たるへり革はもともと金色だったんですけど、色落ちしちゃってます。長いイニングを投げるとここまですり減るんですね。この年から昨年まで3年連続での規定投球回到達。これからもこういうグラブを増やしていきたいと思います。

 そしてこれが今季から使っているグラブです。アドバイザリースタッフ契約を結んでいるローリングス社製で手全体を覆う「ファーストバック」スタイル。投球で右手を強く引いても型が崩れにくいので、昨季途中からこの形状を使っています。ミントグリーンは昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)前の壮行試合で使っていた色。侍ジャパンに唯一、土を付けた試合ですから実質“世界一”のグラブです。

 昔からグラブへの愛着はありました。この牛革の匂いも心が浄化される感じがしていいですよね。次のシーズンに使うグラブは前年のシーズン後半から徐々に慣らしていきます。最初はひたすらはめて自分の体温と革を同じにして一体化するイメージ。パンパンっと捕球面をたたいてポケットを作っていき、そこから初めてボールを捕って型を作っていきます。

 自分から野球を取ったら何も残らない。人によってこの曲を聴くとあの時期、あの場面を思い出すということがあるじゃないですか。僕にとってはグラブがそうなんです。グラブには物語と同じように「起承転結」があります。ここにあるグラブの中で一つでも出会わなければ今の自分はないと思います。もちろん今が「結」ではなく、「転」「転」「転」「転」…とここに並ぶグラブを増やしていきたいです。(中日ドラゴンズ投手)