◇記者コラム「Free Talking」

 今季、福岡から名古屋グランパスに加入したDF三国ケネディエブスが“覚醒”している。昨季までJ1通算25試合出場だった193センチの大型DFは、今ではチーム唯一のリーグ戦フルタイム出場。最終ラインの一員として、欠かせない存在になった。その裏には、沖縄での元日本代表DFとの出会いがある。

 グランパスのキャンプ地・沖縄県南風原町にやってきたのは、元日本代表DF中沢佑二さん(46)。187センチの長身を生かしたヘディングと力強い守備で鳴らしたW杯戦士だ。三国にヘディングのこつを伝授した。いわく、「首は振らずに固定する」。実践したところ、飛距離がいきなり伸びた。「ものの数分で飛ぶようになった」と、三国は驚きを語った。

 最大の財産となったのが中沢さんが代理人を介して三国に託した助言。「言われたこととかを忘れないよう、ノートに書いたほうがいい」。それを聞いた三国は「書かないことのほうが多かった」というサッカーノートを本格的につけ始めた。

 3失点した2月23日の開幕・鹿島戦(豊田ス)後は、自らのミスを全て見返し、どんな時間にどんなプレーをしたか書き出して、改善策を考えた。「それを次の週の練習でチャレンジして、読み返して、またチャレンジして」。一度の練習や試合で得られるものが格段に増え、急激な成長が呼び起こされた。

 三国の左上腕には「SIC PARVIS MAGNA」とラテン語のタトゥーが入っている。TVゲーム「アンチャーテッド」に登場する言葉で、意味は「偉業をなすのも小さな一歩から」。ノートをつける行動そのものは小さな一歩に見えるかもしれない。だが、その積み重ねが、小学校時代から知り合いでもある中村敬斗(Sランス)らが待つ、日本代表への道に通じているはずだ。(サッカー担当・渡辺拓海)