宝石のように透き通る「華わらび」が人気の邸宅カフェ・麓寿庵(ろくじゅあん)の敷地内に、2023年11月、姉妹店「どら焼きと和紅茶 乃咫 nota」がオープンしました。国登録有形文化財の築100年を超える蔵がリノベーションされ、路地奥の隠れ家のような素敵な空間に。オーダーメイドの清水焼プレートに盛り付けられた、パンケーキスタイルの華やかなどら焼きが楽しめます。

明治期の日本画家が暮らした邸宅を目指して

地下鉄烏丸御池駅から六角通を西へ7分ほど。風格漂う門構えのお屋敷が目的地です。こちらは、明治時代に活躍した日本画家・今尾景年が暮らした旧宅で、門、主屋、蔵が国の登録有形文化財に指定されています。軒先に掛かる「麓寿庵」の暖簾に向かって右側が「どら焼きと和紅茶 乃咫 nota」の入り口。石畳の細い路地を奥へと進んでいくにつれて喧騒が遠のき、街のなかにあることを忘れてしまいそうになります。

蔵ならではの重厚な扉を開けて中へ。1階はバーのような落ち着いた雰囲気のカウンター席、2階は3名以上のグループ専用のテーブル席となっています。2階の小窓から見える緑は、主屋の庭園です。

定番人気は、抹茶尽くし

この日、お品書きに綴られていたどら焼きは、プレーン、抹茶、ほうじ茶、季節限定の桜、あまおう苺の計5種。定番人気は、抹茶生地に抹茶あんをサンドして重ね、抹茶クリームをのせた「抹茶」です。生地にはちみつと黒みつを練り込んでいるため、焼き上がってから時間が経過しても、しっとり。隠し味には太白胡麻油を使っているそう。まずはそのままで、お好みで黒みつをかけて“味変”も楽しめます。

季節限定の「あまおう苺」

収穫状況にもよりますが、5月いっぱいまでは、いちごを使った季節限定の「あまおう苺」もお目見えしています。いちごのピューレを合わせた生地でいちご風味のあんをサンドし、甘酸っぱいいちごソースをかけた、春が香るひと品。こちらも黒みつが別添えで付いています。

全国から選りすぐった和紅茶

清水焼のオーダーメイドという茶器でいただくドリンクは、鹿児島・知覧や京都・和束のものなど全国から選び抜いた和紅茶がそろいます。米麹を生かして発酵させるため甘酒のような味わいを感じるものや、はちみつの香りがするものなど、ここでの一杯を機に和紅茶に夢中になりそうなラインナップ。ほんのりと緑茶を思わせる風味の「蓮華」と、ミルクティーに合う「褪紅(たいこう)」は、乃咫のオリジナルブレンドです。

乃咫のオーナーは、ロシア出身の松永リカテリーナさん。十数年前に来日し、心理学や日本語を学びながら飲食店で働く経験を重ねたそう。
「もともと、仙台の郷土菓子のずんだ餅など和菓子が好きで(笑)」、麓樹庵のオーナーと縁があり、乃咫をオープンしました。

「ノタ」は、ロシア語では音符を意味するそう。昔ながらのどら焼きを、新しい感性でアレンジした、心弾むどら焼き。京都らしい空間とともに、味わってみてはいかが。