ファッションが軽やかになってきたので、ヘアも軽くしたい、色を変えて印象チェンジしたい……そんなシーズン到来ですね。
大人の女性の「ちょっと変えたい」を叶える、春夏におすすめのヘアスタイルをご紹介します。
手掛けるのは、その人の顔立ち、顔形、髪質の特徴を見抜き、抜群のセンスで似合うスタイルに仕上げてくれる、代官山のヘアサロン・Srawのディレクター、柳亜矢子さん。
お洒落なスタイルというだけでなく、長年の髪質の悩みも解消するスタイルを提案してくれる柳さんの腕に惚れ込んだ女性は数知れず……すご腕のトップスタイリストです。
「ちょっと切りたいな」と思った方、ぜひ参考にしてください。
#1 思いきりよく、デリケートさも備えたピクシーカット
一見、スッキリ! のいさぎよいベリーショートだけど、実は耳は全部出すのではなく、サイドの毛先がやや耳上部にかかる長さになっていたりするなど、襟足の両サイドは首に沿うようなカットになっているなど、ディテールに繊細にこだわることで、女性らしさを醸し出すベリーショートスタイルです。
重めのシルエットにするのではなく、トップからレイヤーを入れ、ザクザクした毛束感が残るように、セニングでニュアンスを作って軽さを出すのもポイント。
カラーもオレンジピンクを入れることで、肌がより明るく色白に見え、お洒落で軽さのある雰囲気に。
オーダーとスタイリングのポイント
前髪は眉よりかなり上の位置でカット。全部おろしてラインを作るのではなく、ザクザクとした雰囲気になるようにし、少し流せば動きが感じられるように調整する。トップはレイヤーを入れ、頭の立体感を出すために、あまり長くしない。前髪は短く、サイドは毛束感をやや多めにし、耳上部が隠れるくらいの長さを残す。襟足も刈り込みすぎず、首に沿うような長さを残す。
カラーはオレンジとピンクを混ぜた、10レベルくらいのトーンに。
スタイリングは、朝、全体を濡らして寝ぐせを取り、バームを多めに全体につけて前髪やサイドに動きをつける。
YANAGI’s Point
大人の女性のベリーショートは、全体が縦長になるとシャープでキツイ印象が強くなったり、老けて見えたりしがちなので、バックのウエイト(重みを出す部分)の位置は高くせず、低い位置にくるようにして、丸みのあるシルエットを意識し、縦長になりすぎないようにしています。
サイドや襟足を切りすぎず、ほんのちょっと長さを残すことで全体のバランスがガラリと変わり、子供っぽかったり、老けて見えたりしないショートを楽しめるので、トライしたい方はぜひ相談してください。
#2 くせ毛のハネも生かしたナチュラルなミニボブ
もともとの髪のくせを生かし、ハンドブローで仕上げたラフさが魅力の、ナチュラルなボブスタイル。
ロングでボリュームもあると重たくなりすぎてしまうけれど、短めレングスであえて程よくボリュームを残すと、首が華奢に見えるし引いて見たときにバランスよく見えます。
前髪を少し幅広めに作り、両端がフェイスラインに沿って毛流れが出るよう、角度を下げているのもポイント。
そのちょっとの気づかいが、斜めや横から見たときの抜け感につながり、地味で無難なボブとは一味違う、と感じさせてくれます。
オーダーとスタイリングのポイント
バックとサイドはあごラインで水平ラインにカット。ある程度ボリュームを残したいので、レイヤーは入れない。前髪は薄く作り、目に少しかかるくらいの、少し長め、幅はやや広めに作る。前髪の両端がサイドに自然に流れるよう、やや角度を下げてカットを。
スタイリングは、全体を濡らした後にオイルを全体に伸ばし、ハンドブローで少し髪を伸ばしながら乾かすと、油分が髪に浸透し、くせが伸びやすい。毛先はハネても可愛いので、あまり気にせずラフに。前髪はバームをつけて、束を作りながらサイドに流す。
カラーは8レベルのヘーゼルブラウン。くすませずツヤを重視。
YANAGI’s Point
短めのレングスでボリューム感があるとお洒落でバランスもよく、首回りがきれいに見えるので、さほど毛量を調整する必要はありません。ボブレングスで前髪が厚く、パツンと一直線になるとモード感が強くなりますが、前髪の分量を少なめにし、パラパラッとおろしておでこが見えるようにすると、ぐっと女性らしくナチュラルな印象になります。
#3 コロンと丸みのあるシルエットで「脱コンサバ」ショートレイヤー
ショートレングスだけどナチュラルで、長めの前髪が女性らしい雰囲気を作るので、ショートにするのが初めての人にもトライしやすいスタイル。
ポイントは高低差の少ないウエイト低めのデザインにすること。そうすることで、コンサバ寄りでなくカジュアルな印象になり、よりナチュラルな雰囲気を強めることができます。
またサイドから見たときに、コロンとした丸みのあるシルエットになるよう、ウエイトの位置を低めにすると、頭の形がよく見え、全身で見たときのバランスもよくなります。
オーダーとスタイリングのポイント
トップに高さを出すのではなく、前髪、サイド、トップ共に同じくらいのレングスで長めにカットするショートレイヤー。前髪は鼻にかかるくらい、サイドは耳下くらいの長さに。後頭部のウエイトを耳の位置くらいに低めにすることで、トップから襟足にかけて、コロンとした丸みが出るようにする。襟足は切り込みすぎず、やや長めに。
スタイリングは、バームを全体に馴染ませ、ドライヤーで乾かしながらハンドブローで仕上げる。さらにバームを全体に塗布して、前髪に束感を出したり、襟足が浮く場合は軽くなでつけたりするようにして形を作る。
YANAGI’s Point
コンサバでもモードでもなく、カジュアルな雰囲気と柔らかい女性らしさも備えたショートヘアにするために、前髪は前上がりにカットしています。前髪は前下がりにすると、モード感が強くなるのですが、前上がりにすると、正面から見たときも丸みを強調できるので、柔らかい雰囲気に。また前髪を長めにし、センターで分けることで、大人な印象のショートヘアになります。
#4 顔回りにデザインを入れる今っぽいミニボブ
サイドとバックはリップラインの高さで水平にカットし、前髪は気持ちラウンドカットにした、ちょいモードな雰囲気のミニボブ。
さらに、サイドの毛束が顔にかかるようにカットして、顔回りにデザインが入るようにすることで、トレンド感と小顔効果も手に入るお得なスタイルです。
カイノユウさんのスタイルのように面を整え、ラインが際立つスタイリングでもよいし、濡らしてからバームを全体につけ、もっとくしゃくしゃっと動きをつけても決まります。
オーダーとスタイリングのポイント
バックとサイドはリップラインで水平ラインにカット。前髪は幅広めに、眉が見えるか見えないかくらいの長さでカット。前髪の両サイドをやや落とし、ラウンド気味のラインに仕上げる。サイドの耳前から耳にかかるくらいまでの毛束を、鼻の高さから前上がりになるようにカットし、顔周りにデザインを入れる。
スタイリングは、面をきれいに見せたい場合はオイルを全体に馴染ませ、コームでとかしてなじませながら乾かす。くせ毛で面の均一さを出しにくい場合は、表面の毛をストレートアイロンで伸ばして。逆にバームを全体に塗布し、前髪やサイドに毛束を作りながら、動きをつけるのも可愛い。
YANAGI’s Point
顔回りのデザインは、毛先がパツンと一直線になると顔の周りが直線だらけでややキツイ印象になるので、毛先をあえてザクザクと切り、ラフになるようぼかしています。前髪は、幅が広いと個性的な印象が強まります。モデルの場合はやや幅広めにして目元の印象を強調していますが、顔立ちによって幅を変えることで雰囲気を変えられます。
#5 小動物みたいに愛くるしい、キュートに決まるベリーショート
究極に短いのに可愛くて、赤ちゃんみたいな愛らしさが漂うベリーショートスタイル。
#1とベースのカットは似ているけれど、前髪や襟足、トップもさらに短くしたバージョンです。
前髪が生え際ぎりぎりくらい短いけれど、軽く流したときに動きが出るようやや不ぞろいにカットしてあったり、もみあげのあたりはパツンと切らず、細かく毛流れが出るようにカットしたりするなどの細かいテクニックのおかげで、老けて見えずに可愛さと女性らしさも感じさせるベリーショートに。
オーダーとスタイリングのポイント
トップとサイドにかけてはレイヤーを入れ、バックはウエイトの位置が耳の高さくらいにくるよう、低めにする。襟足はボリュームが出ないようスッキリ短めに。前髪は生え際ぎりぎりくらいの長さで、一直線のラインにせず、ハサミを縦に入れてランダムに短くカット。もみあげから耳にかけても、パツッと切らず、毛流れが出るようなニュアンスを残す。
スタイリングは、全体を濡らした後にバームを全体に伸ばし、前髪やサイドに流れの動きをつけるだけ。
YANAGI’s Point
モデルの千晶さんはおでこがとても可愛いので、そのチャームポイントを出すように前髪はかなり短くカットしています。色は入れていないので、重たくならないよう軽い質感のレイヤーを細かく入れました。
ベリーショートはハードルが高く感じるかもしれませんが、実は髪が少ない人や多い人、またくせ毛さんなど、色々な髪質に対応できる汎用性の高いスタイルなので、思っているよりチャレンジしやすく、また、スタイリングもラクチンですよ。
このヘアスタイルを担当したのは……
Srawディレクター・柳 亜矢子さん
2006年、broocH(ブローチ)の立ち上げに参画。2021年7月、代官山に「Sraw」をオープン。サロンワークだけでなく、美容アイテムの商品開発にも携わる。
Instagram:@ayakoyanagi
【協力】Sraw
https://brooch.jp/sraw/
文=斎藤真知子