日が傾くにつれ、沖縄の空と海はさまざまな表情を見せる。完全に日が沈むと「星のや沖縄」のインフィニティプールには水中照明が灯り、「宵涼みナイトプール」で夏の夜を満喫することができる。

 日本気象協会の予報によれば、2024年は梅雨が長く、梅雨が明けると酷暑が続くとのこと。

 そこで今回は、「星のや」のアクティビティやプログラムの中から、春を味わい尽くすものと、夏を乗り切るためのものを厳選した。


【星のや東京】夏の宵・納涼舟あそび

●江戸の町人の粋に学ぶ


江戸時代にペリーが来航した際に、浦賀奉行所の与力にシャンパーニュとシャルキュトリを振る舞ったという史実をもとに、メニューを構成したという。

 江戸の町は、「水の都」として栄えた。張り巡らされた水路を中心に問屋や市場が生まれ、その周辺に飲食店をはじめとする商店が広がったのだ。江戸の水路は人や物資を運ぶ交通手段として重宝されたいっぽうで、多くの娯楽も提供した。そのひとつが舟あそびで、大川(隅田川)の涼みは江戸の夏の風物詩だった。川面を走る風から涼を感じた江戸の文化から着想を得たのが、このアクティビティだ。

 乗船前に、まずは薄荷湯で清涼感を味わい、日本橋の老舗「梨園染 戸田屋商店」が薄手の木綿生地で仕立てた浴衣に袖を通す。乗船後は、刻々と変化する東京の夕景を眺めながら、デイベッドのようなソファで足を伸ばしてくつろぐ。そして味わい深いシャンパーニュで喉を潤し、季節のおつまみを楽しむ。

 薄荷湯に浸かった肌を撫でる風は爽やかで、通気性に富んだ浴衣のおかげで肌の表面はさらさらに保たれる。ほかに、シャンパーニュを冷やす氷柱クーラーや江戸風鈴の涼やかな音色など、江戸の粋を五感で体験することができる。


提供される季節のおつまみ。写真右より、メルゲーズとラタトゥイユ、鶏肉のシャルキティエール、とうもろこしのフリットと瀬戸内キャビア。シャンパーニュは長期熟成された力強い味わいのものが用意される。

【夏の宵・納涼舟あそび概要】

期間:2024年5月28日〜8月28日
時間:18:05〜19:50(うち乗船時間75分)
料金:1名13万5,900円、2名14万7300円、3名16万1,200円、4名17万2,600円(税・サービス料込)※宿泊料別
定員:1日1組4名まで
予約:要
予約方法:公式サイトより7日前までに予約
対象:星のや東京宿泊者

【星のや竹富島】「島テロワール」春のディナーコース

●八重山の食文化とフレンチの邂逅


「炭火で焼いた豚肉のデクリネゾン」のソースや付け合せにはチラガーやタン、ミミガー、レバーなど豚のさまざまな部位が使われ、「鳴き声以外はすべて食べる」という八重山の食文化を表現する。

 竹富島を含む八重山の島々は、南国の食材に恵まれているだけではなく、自然環境や歴史が育んだ独自の食文化が継承されている。フレンチの技法やアイデアを用いて、南国らしい食材や受け継がれてきた文化を驚きの味わいに仕立てるのが、「島テロワール」のディナーコース。2024年の春から夏にかけてのメニューは、沖縄では「鳴き声以外はすべて食べる」とされる豚や、祝いの席に欠かせないヤギ、特産の野菜やハーブなどを用いたメニューを提供する。

 たとえば「炭火で焼いた豚肉のデクリネゾン」というメニューは、付け合せに煮込んだチラガー(顔皮)、ミミガー(耳皮)、タン(舌)を使用。ここに豚骨などを用いるソースや、豚のゼラチン質から作られたチュイル、豚レバーと豆腐ようのムースなどが組み合わされる。豚のあらゆる部位を余さずに使い切る八重山の食文化と、さまざまな調理方法で食材を活かすデクリネゾンというフレンチの技法が一体となっている。

 食材の質はもちろん、食文化を継承してきた竹富島の人々の苦労や喜びにまで思いを馳せるメニュー構成になっている。


星のや竹富島の中洲達郎総料理長は、地元の食材を見極める確かな目と、使用する食材を自ら探す行動力で知られる。2011年にフランスで最も権威ある大会「ボキューズ・ドール」国際料理コンクールにおいて、日本代表、アジア代表として出場した経験を持つ。

【「島テロワール」春のディナーコース概要】

期間:2024年3月21日〜7月上旬
料金:1名1万8,150円(税・サービス料込)※宿泊料別
予約:要
予約方法:公式サイトより前日まで受付
対象:星のや竹富島宿泊者

【星のや軽井沢】軽井沢 蒸湯滞在-夏-

●専門家が監修するサウナを用いた健康法


客室のテラスには、中温高湿のオリジナルのサウナボックスが設置される。高湿の水蒸気を発生させるロウリュも可能で、体を深部から温めた後は外気浴でクールダウンする。

 蒸し暑い屋外と冷房の効いた室内を行き来すると、体温調整を司る自律神経に乱れが生じがちで、いわゆる夏バテにつながってしまう。サウナなどの熱刺激と外気浴などの冷刺激を交互に繰り返すことは疲労回復に効果的で、汗をかくことで夏の暑さに体を慣らすこともできる。ただしサウナは正しく行わないと、脱水や体に高い負荷をかけることになる。そこで星のや軽井沢では、温泉療法専門医の早坂信哉氏に監修を依頼、心身ともにリフレッシュできるプログラムを開発した。

 本プログラムでは、テラスにオリジナルのサウナボックスを配置した特別な客室を用意。外気浴も楽しめるように、テラスにはグラビティチェアも設置した。熱と蒸気によって体を深部から温めるウェットサウナで汗をかいた後は、軽井沢の爽やかな風を感じながら、開放的な外気浴。プライベートな空間で、サウナと外気浴を気兼ねなく繰り返すことができる。

 サウナで汗をかくので、このプログラムでは発汗後に不足しがちなビタミンやミネラルをたっぷり含んだ夕朝食を提供。夕食の「すっぽん鰻鍋」を食せば、コラーゲンとビタミンが体に染み渡る。


客室内の風呂には浅間山の伏流水を使用。皮膚への刺激が少ない軟水なので、外気浴の後で入浴すると乾燥しがちな肌をいたわることができる。

【軽井沢 蒸湯滞在-夏-概要】

期間:2024年5月13日〜8月31日(除外日あり)
料金:1名1泊8万円(税サービス料込)※宿泊料別
定員:1日1組(2名まで)
予約:要
予約方法:公式サイトより10日前までに予約

【星のや沖縄】宵涼みナイトプール

●プールサイドに流れるチルな時間


琉海からの涼やかな風が渡るプールで満天の星を眺めながら優雅なひとときを。

 星のや沖縄の広大な敷地に、海に向かって突き出すように設計されたインフィニティプールは「Travel+Leisure Luxury Awards Asia Pacific 2023」で日本一のホテルプールに認定された。泳ぐのももちろん楽しいけれど、水深10センチの水盤のようなエリアやプールサイドでは、水着を着なくても涼を感じながら過ごすことができる。暑さが和らぐ夜に、心地よい風が通り抜ける夜のプールでリラックスしながら特別な時間が過ごせる。

 水中照明が灯るプールはどこか幻想的で、非日常の雰囲気。ここで満天の星を見上げながら風の音や波音に耳を澄ませば、沖縄の自然がより身近に感じられる。期間中は琉球古典音楽を演奏する「夏夜の奏」が開催され、プールサイドは三線の優しい音色と穏やかな旋律で満たされる。

 食後酒を楽しむ時間帯には、泡盛や沖縄の醸造所が手がけたドリンクを提供。伝統的な音楽や沖縄らしい飲み物とともに、南国の夜がふけていく。


琉球古典音楽の演奏「夏夜の奏」の三線の音色は、風の音や波の音と一体化するやさしいもの。プールには島時間が流れる。

【宵涼みナイトプール概要】

期間:2024年5月15日〜8月31日
時間:ドリンク21:00〜22:00(L.O)、琉球古典音楽の演奏「夏夜の奏」21:30〜21:50
料金:プール利用と、琉球古典音楽の演奏「夏夜の奏」は無料、ドリンク2,000円〜(税込)
予約:不要
対象:星のや沖縄宿泊者

文=サトータケシ