〈アンジェラベイビーでもあるまいし 黙っててもアルマンドは降っていこない〉。ストーカー男に刺殺された平沢俊乃さん(25)が生前、SNSに綴っていた言葉である。夜の街でナンバー1に駆け上がるための心得をといた文章だが、積極的な接客姿勢が仇となってしまったのかーー。

1年前、「もう大丈夫です」と自ら接近禁止命令を解除していた

 数時間の張り込みの末、数十メートル追いかけ回して果物ナイフでメッタ刺し。首、腹、背中まで刺し傷は計数十カ所に及んだ。

「体を傷だらけにしてやろうと思った。結婚を前提に1800万円も援助してきたのに、返さなかったからだ」

 5月8日未明、平沢さんの自宅マンション敷地内で現行犯逮捕された職業不詳の和久井学容疑者(51)は、こんな身勝手な供述をしているという。だが、和久井容疑者と平沢さんとの間には交際歴は確認されていない。

「2〜3年前、和久井容疑者は、平沢さんが経営していた新宿のガールズバーに通い詰め、しつこく言い寄ったり、自宅で待ち伏せするなどしてトラブルになっていた。21年12月に警視庁は口頭で注意。ただ一向につきまとい行為をやめようとしなかったので、22年5月にストーカー規制法違反で逮捕し、翌6月、1年間の接近禁止命令を出した」(警視庁担当記者)

 それから1年が経過した23年7月頃、警視庁が状況確認した際、平沢さんは「もう大丈夫です」と延長を求めなかったため、禁止命令を解除していた。

 だが、その後も和久井容疑者は一方的に恨みを募らせていたのだ。

「お客様ノート」を毎日書いて4カ月でナンバー1に

 亡くなった平沢さんは持ち前の美貌を生かし、銀座や上野で売れっ子ホステスに駆け上がった。下記は平沢さんが銀座時代、煌びやかなジュエリーを身につけ、高級酒「ルイ13世」を手に持った自撮り画像とともにSNSに投稿していた文章である。

〈数千円差でNo.1逃すとかザラにあるし となるとあの時一杯飲んでれば…って後悔する事になるよね 「来週会うって言ってくれたからシャンパンはその時にしよ♪」って、そのまま音信不通になったら あの日にシャンパン飲みたかったと後悔する事になるよね お客様はいつ帰るか分からない、いつ居なくなるか分からない〉

 決め台詞は、

〈アンジェラベイビーでもあるまいし 黙っててもアルマンドは降っていこない〉

 別の投稿では、高級シャンパンに囲まれながらピースを決めて、夜の街で生き抜く覚悟をこう綴っている。

〈18歳の時銀座で働いた時には相手にされず 1日席に付けてもらえない日、数えきれないくらいあった。そしてやっと数組出来たお客さん。私の来客はボックス空いてても数名だとしても必ずカウンターだった〉

〈やっと立ち上がってX(実際は銀座の店名)に入店した時は毎日出勤して指名のお客さん被ってたとしてもフリーが来店したら必ず席付いてお客様ノートと来客、売上を毎日欠かさず 手帳に書いてお客さんゼロスタートから4ヶ月目でやっとNo.1になれて辞めるまでずっとその地位を貫いて今の私がいる〉

〈まだ未熟だけど そんな時もあったの だから私がずっとスタッフとキャストに言い続けてる“負けん気”と諦めずに頑張り続ければ必ず結果が出るよって言うのはそういう事。〉

警察関係者は「引っ越しすべきだった」

 警察関係者は「1年間何もなかったので油断していたのではないか」と話す。

「昨今、ストーカー被害はこのような悲劇につながるケースが多発しています。警察は禁止命令が出ている間は、1カ月ごとに安否確認を取ったり、ちょっとでも相手に怪しい動きがあれば連絡を取って警告するなど、親身に守ってくれます。ただストーカーを繰り返す男は、一度注意や警告されたくらいではやめようとしない。自分の生活難などをふられた女性のせいにして執拗に恨み続ける」(警察関係者)

 昨年11月にも世田谷区のマンションで、20代の女性が元交際相手の中国人男性からナイフで殺害される事件が起きた。この事件では3カ月前に女性側から「彼氏から暴力を振るわれた。別れたい」などの被害申告があったため、警視庁は男性を口頭注意し、しばらく月1回安否確認を行っていた。

 だが、女性側が「男を逆上させたくない」と言ったため、警察はストーカー規制法に基づく警告や禁止命令を出さなかった。禁止命令が出ていれば事件を防げた可能性はあった。

「今回のケースでも禁止命令を延長することが出来た。その後、警視庁には何の相談もなかったようですが、いきなり2年ぶりにやってきたとは思えず、何らかの予兆があったはず。何よりも悔やまれるのは、平沢さんが引っ越さずに和久井容疑者に住所を知られた状態のままだったこと。命よりも大事なものはない。ストーカー被害にあった人は、面倒に思っても2度と付きまとわれないよう早めに引っ越すことが肝要です」(同)

デイリー新潮編集部