店主は3代目弘道会・湊興業の余嶋学組長

 昨年4月、神戸・長田のラーメン店で、店主の6代目山口組傘下組織の組長が射殺された事件で、その殺害に関与した疑いが強まったとして、兵庫県警は、暴力団・絆會の金澤成樹(本名:金成行)若頭(別の殺人未遂罪などで起訴)を組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人)容疑で逮捕する見込みだという。ラーメン店という一般市民が出入りする場で発生した極めてショッキングな事件は解決へと向かうのか。

 まずはおよそ1年前の事件を振り返っておこう。

 亡くなったのは、6代目山口組の3次団体で、3代目弘道会・湊興業の余嶋学組長。経営するラーメン店「龍の髭」の厨房で頭から血を流しているのを従業員が見つけた。店内に薬きょうが落ちていたが拳銃はなく、司法解剖の結果、余嶋組長の頭部から銃弾が見つかった。

 事件当初から、帽子をかぶった人物が入店し、数分して店を離れる場面が店の入り口に設置された防犯カメラで確認できていた。

「この人物がその後、車で逃げたことがわかりました。防犯カメラ映像を辿っていくことでその車を押収することに成功。車内から金澤若頭に関係するブツを見つけたようです」

 と、担当記者。

線条痕が一致

 そもそも金澤若頭は2020年9月、長野・宮田村で絆會を離れて6代目山口組側に移籍した舎弟分を説得中に発砲して逃走。殺人未遂罪で全国指名手配の身だった。

 今年2月、宮城・仙台に金澤若頭の潜伏先に関する情報が捜査当局に寄せられる。これをもとに警察が踏み込み、逮捕・起訴となった。その後、22年1月に茨城・水戸で6代目山口組傘下組織の組員を殺害した容疑でも逮捕されている。

「仙台市内の潜伏先では拳銃1丁が押収されているのですが、発射する際に銃弾につく線条痕が神戸の事件で残された銃弾と一致したようです。それとこれまで積み重ねてきた証拠を合わせ、金澤若頭以外に犯行を行うことができた人物はいないと結論づけたということなのでしょう」(同)

 それにしても不思議なのは、拳銃を持ち続けていたことだ。通常なら犯行後、凶器は早めに処分したほうがいいというのは常識のはず。
どうして潜伏先に残されていたのか。

「一連の犯行を見ると、金澤若頭がこの数年、ヒットマンとして我が身を捧げてきたことがわかります。拳銃の手配にはそれなりのルートが必要で、トラブルが発生した際には迷惑をかける可能性があります。織田絆誠・絆會会長への忠誠心の塊のような人物とされている金澤若頭だけに、それを回避したかったのかもしれないですね」(同)

ハラをくくっていた

 一方で、元山口組系義竜会会長の竹垣悟氏(現在は、NPO法人「五仁會」を主宰)の意見はこうだ。

「潜伏を続けながらも、遅かれ早かれ身柄を拘束されることは避けられないとの認識があったのかもしれないですね。逃げ切ろうとするなら真っ先に凶器は捨てるはずですから」

 今後の捜査のポイントについて、先の記者は、

「織田会長の関与を立証できるか否かです。金澤若頭の潜伏先は絆會の関係者が借りていたものと見なされ得る物件ですし、4年弱にわたって逃走が可能だったのは組織的な支援あってのことと追及される可能性もあるでしょう。金澤若頭同様、組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人)容疑での逮捕を狙っているとの情報もあります」

 と話す。余嶋組長の死は謎に包まれていたが、ようやく事件の真相が明らかになるだろうか。

デイリー新潮編集部