開幕オーダーが全員、生え抜き?

 いよいよプロ野球開幕。昨年日本一の阪神タイガースは、東京ドームで巨人と対戦する。開幕3連戦は両チームの指揮官にとって采配の見せどころではあるが、岡田彰布監督(66)が近本光司(29)、大山悠輔(29)の開幕スタメンを明言したのは、3月26日の練習中だった。右足を負傷した森下翔太(23)の起用についても聞かれたが、否定しなかった。“ほぼ”ベストオーダーで開幕戦を迎えることになる。

「スタメンレフトはノイジー(29)ではなく、前川右京(20)になりそう。前川がスタメンなら、開幕オーダーは全員、生え抜きの選手ということになります。阪神としては72年以来、52年ぶりのことです」(在阪記者)

 もっとも「生え抜きがどうの」なんて悠長なことは言っていられない。アレンパ(「アレ」と2連覇をかけた造語)を目指す阪神がオープン戦最下位に終わったのは、主力選手たちの負傷だけが原因ではなかった。はっきり言えば、試合内容も悪かったのだ。しかし、岡田監督は強気な姿勢を崩そうとはしない。

「球団初となるオープン戦開幕から9連敗を喫した直後、岡田監督も担当記者に負けないデータ解析で持論を披露しました」(前出・同)

 話はオープン戦の関東遠征前、3月11日に遡る。新大阪駅構内でのこと。記者団に囲まれ、東京行きの新幹線に向かう途中、岡田監督はいまだ未勝利の戦況について質問されると顔をしかめ、

「去年、俺らが覆したんかな、優勝して」

 と返したのだ。記者団は何の話を返されたのか、分からなかった。その様子を見て、さらに続けてこう言った。

「だ、か、ら〜、4年間で3チームが優勝してる言うてるやんか」

 トラ番記者の「セイバーメトリクス(野球を数字でデータ分析すること)」によれば、オープン戦最下位はマイナス要素ではないそうだ。岡田監督が言いたかったのは、近年のセ・リーグの傾向である。ここ数年のリーグ優勝チームを振り返ってみると、20年・巨人、21、22年のヤクルトはオープン戦最下位だった。昨季優勝した阪神は、オープン戦8位でリーグ優勝・日本一となっている。オープン戦の成績が振るわなくても悲観する必要はないと、岡田監督は言いたかったようだ。

 もっとも、阪神はオープン戦18試合を終了して、3勝14敗1分け。総失点76、チーム防御率3.61は12球団ワースト。9連敗中に出した四死球は34で、トータル52。つまり、岡田監督がもっとも嫌う「四球とエラーで余計な失点を与える」チームになっていたのも事実だ。

救援陣がマイナスのまま開幕

「監督が優先的に中継ぎ登板させていたのは主に石井大智(26 )と島本浩也(31)でした。オープン戦最終戦後、両投手の調子を上げていくきっかけにしたかったと話していました」(前出・在阪記者)

 その石井と島本が指揮官の期待に応えられなかったのは、24日のオープン戦最終ゲーム。7回、先頭バッターのオリックス・紅林弘太郎(22)を漆原大晟(27)がショートゴロに仕留めると、岡田監督が動いた。左バッターの宗佑磨(27)が打席に向かうと、漆原に代え、左腕・島本を投入。この時点でのスコアは2−3。僅差での好ゲームが続いていた。しかし、その「左バッター対策」で投入した島本が宗、同じく左打ちの森友哉(28 )に連打を食らい、2失点。8回に投入した石井も失点してしまった。

 試合後の岡田監督の第一声は、「オープン戦の収穫? 収穫はあんまりなかったな」。苦笑いを浮かべていたが、その表情は「疲れた」と言わんばかりだった。

「ペナントレース本番なら島本、石井を続投させませんでした。というか、調子の良くない投手をあえて投入する起用はしないはずです」

 チーム関係者はそう言うが、ダブルクローザー構想の岩崎優(32)、ゲラ(28)につなぐセットアッパーへの不安は残った。一方で、オープン戦で好投した岡留英貴(24 )に期待する声も多く聞かれた。セットアッパーとしての実績のある岩貞祐太(32)、若手の浜地真澄(25)の調子も上がってこない。継投策が得意な指揮官は、昨年よりも救援陣がマイナスの状況でシーズンに突入するわけだ。

「もう一人、期待の左腕・門別啓人(19)がいます。先発で使い、大きく育てていく方針ですが、あいにく、先発枠に空きがなく、待機状態です。岩貞たちの調子が戻ってくるまでの間、門別をリリーフで使ってくるのではないかと」(ベテラン担当記者)

 門別はオープン戦2試合6イニングを投げて、ヒットは4本しか打たれていない。失点2は記録しているが、一軍戦力を寝かせておく手はない。岡田監督は「門別のリリーフ論」を否定していたが、対戦カードが一巡する4月16日以降になっても、岡留以外のセットアッパー陣の調子が上がってこなければ、「再考する」のではないだろうか。

「ドジャースに移籍した元オリックスの山本由伸(25)も最初はリリーフでした。短いイニングで強いボールを投げることも、門別にとってプラスの経験になると思いますが」(前出・同)

阿部監督を「知らない」

 岡田監督はオープン戦最下位チームが近年、セ・リーグの覇者となる傾向について言及したが、20年の巨人優勝前を調べてみると、そうとは言い切れない結果も残っていた。

 14年までの過去10年間を見てみると、オープン戦最下位のチームが、そのままペナントレースでも最下位になった例が3例もあった。14年ヤクルト、16年中日、そして18年の阪神だ。また、最下位は免れたとしても、Bクラスに低迷した例は10年間で6例。20年から23年までが「異例」と言えなくもない。

 また、20年以前のオープン戦最下位のチームが優勝したシーズンを探すと、08年巨人まで遡らなければならない。その前は01年の近鉄バファローズだ。

 阪神に限ってだが、前回のオープン戦最下位は18年。同年は最下位だった。交流戦は11位で、12位楽天とのゲーム差は0.5。阪神にとって、オープン戦最下位は良い結果にはなっていない。

「岡田監督は巨人のことを気にしていました。開幕戦でぶつかるからではありません。若い阿部慎之助監督(45)をよく知らないからです。阿部監督がどういう投手継投をしてくるのか、攻撃面でどんな作戦を好むのか。岡田監督は、相手の出方を見て対策を講じていくタイプなので、かえって不気味に感じているようです。その反面、巨人がトレード獲得した高橋礼(28)とは、オープン戦で直接対決する機会にも恵まれたので、警戒している投手は特にいません」(前出・関係者)

 その高橋とは、開幕第3戦での対決が予想されている。今シーズンの岡田采配の一端が見られるのは「対高橋」となりそうだ。

デイリー新潮編集部