被災地への寄付が目的の勧進相撲を欠席し…

 将来、日本相撲協会を背負って立つことが期待されている元横綱稀勢の里こと二所ノ関親方(37)。しかし、親方本人は62年ぶりの「勧進大相撲」を欠席しゴルフにかまけ、弟子の悪質なアルハラ疑惑は隠蔽(いんぺい)する始末。率いる部屋の統制が全く取れていないという。【前後編の前編】

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 4月16日、茨城県内のある名門ゴルフコースでは二所ノ関親方と3名の弟子が、総勢100名余りはいたであろうタニマチたちとラウンドに興じていた。

 春の陽気が本格的に訪れたこの日、主役の親方は半袖シャツ姿で汗ばみながらクラブを握った。5年前まで横綱稀勢の里として鳴らした抜群の身体能力は今もさほど衰えておらず、巨体からは想像もつかない見事なスイング、軽快な動作でナイスショットを連発していた。

 この様子だけを見れば何の変哲もない光景だが、わざわざ取り上げるのには深い理由がある。さる日本相撲協会の関係者は怒りに震えながらこう語るのだ。

「二所ノ関部屋主催のゴルフコンペが開催されたこの4月16日の日中、東京・両国国技館では『勧進大相撲』が執り行われていました。元々、勧進相撲とは神社仏閣の建立や修繕などの資金集めのために行われるもので、今回は能登半島地震の被災地への寄付が目的です。1962年に大阪の四天王寺の復興のために行われて以来、62年ぶりの勧進相撲となる一大イベントだったわけですが、二所ノ関親方はこれを欠席してゴルフにかまけていたのです」

「ゴルフを優先させるために前もって欠席を届け出」

 今回の正式名称は「能登半島地震復興支援勧進大相撲」。会場では、横綱照ノ富士の土俵入りや大関霧島、琴ノ若、豊昇龍をはじめとする大勢の人気力士たちの取組、元横綱鶴竜こと音羽山親方らによるOB戦が行われた。

 他にも、関脇大栄翔や幕内高安らが得意の歌を歌うなどの華やかな出し物が披露され、火曜日であったにもかかわらず約7000人もの相撲ファンが駆け付けたのだった。

「このたびの『勧進大相撲』は、協会の社会貢献部に所属する親方衆が運営を担いました。協会の仕事として社会貢献部の皆で当日の役割を分担し、興行を成功に導いたのです」(同)

 実は二所ノ関親方もこの社会貢献部の一員。本来なら相応の役割を担わなければいけないはずだったが、

「無責任にも大好きなゴルフを優先させるために、前もって欠席を届け出ていたようです。社会貢献部に所属する親方で欠席をしたのは、協会の他の仕事でどうしても当日の都合がつけられなかった一部の人間を除けば、二所ノ関親方だけでした」(同)

「虚偽の欠席理由を届け出ていた場合…」

 大相撲担当記者が憤りもあらわにこう述べる。

「“親方にとってはタニマチとのゴルフも仕事なので、『勧進大相撲』の欠席は仕方がない”という理屈は通用しません。協会の仕事である『勧進大相撲』は“公務”のようなもので、対するゴルフは仕事としての側面が強いとはいえ、あくまでも“私用”に過ぎないからです。つまり、二所ノ関親方は自己中心的な理由で、震災復興支援の大義に一人だけ背を向けたといえます。親方に必要とされる倫理観が大いに欠如しており、批判されてしかるべきです」

 部屋からは被災地の石川県出身で、近い将来の横綱候補と評される幕内の大の里(23)が参加し、地元に思いをはせる言葉が美談として報じられたが……。

 2007年、当時横綱だった朝青龍(43)がケガを理由に巡業を欠席していた際、母国モンゴルで元気にサッカーを楽しんでいたことが明るみに出て、2場所出場停止などの処分を受けた不祥事が世間を騒がせたが、

「もし、二所ノ関親方も虚偽の欠席理由を協会に届け出ていた場合は、かつての朝青龍と同じように処分を受けなくてはいけなくなるでしょう」(同)

師匠としての義務を放棄

 横綱稀勢の里は19年1月の引退後に部屋付きの荒磯親方となり、21年8月に田子ノ浦部屋から独立を果たす。その4カ月後、元大関若嶋津(67)と名跡交換を行って現在の二所ノ関親方となり、同時に二所ノ関一門の総帥にも就任した。

「17年の初場所後、日本出身者としては19年ぶりの横綱となった稀勢の里は、現役時代から将来の協会を背負って立つことが大いに期待されてきました。若くして歴史ある名跡、二所ノ関一門の総帥に就任できたのも、周囲から次世代の理事長にふさわしいと目されているからです」(前出の大相撲担当記者)

 しかし、ここにきて、二所ノ関部屋からは耳を塞ぎたくなるような不協和音ばかりが聞こえてくる。「勧進大相撲」への欠席が象徴するように、人知れず二所ノ関親方が師匠としての義務を放棄しており、部屋が混乱に陥っているというのだ――。

 後編では、弟子・大の里によるアルハラ疑惑や、協会による二所ノ関親方へのえこひいきぶりについて詳報する。

「週刊新潮」2024年5月2・9日号 掲載