松井稼頭央(48)が西武ライオンズの監督を事実上解任された。たしかに成績は芳しくなかったが、球団のレジェンドがわずか約1年半でクビになってしまったことについて、さすがに同情論も広がっている。果たして今回の処遇は適切だったといえるのか。

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 西武は5月26日、成績不振を理由に監督の松井を休養させ、今後は渡辺久信GM(58)が監督代行を兼務する旨を発表した。

「球団は休養という表現を使っていますが、これは事実上の更迭です。松井が監督に就任した昨季、チームは5位に沈みました。今季も低迷ぶりは変わらずで、5月18日には球団最速となる39試合目に自力優勝の可能性が途絶えてしまいました。以降も最下位が続いてしまい、全試合の半分も消化していない段階ではありましたが、球団は今回、重い決断を下したのです」(スポーツ紙記者)

「そっとしておいてあげたい」

 松井が高校時代からお世話になってきた恩師は肩を落としてこう語る。

「彼とはゴールデンウィーク明けにメールでやり取りをしたのですが、その時すでに“今は若手を起用しているので、辛抱しております”と、苦しい心境を吐露していました」

 そこで、恩師は西武の移動日にあたる5月27日、自身の地元である名古屋市のステーキ店でチームの他のスタッフらも交えて、会食する約束をしたそうだ。

 しかし――。

「休養が発表される直前に松井から断りの連絡が入ったんです。新幹線での名古屋入りが27日の最終電車か、翌28日になりそうだ、とのことでした。彼はその時すでに自身の処遇がどうなるのかを知っていたのでしょう。以降、私からは連絡をしていない。しばらくの期間は、そっとしておいてあげたいと思っているからです」(同)

“いけにえ”として

 松井は現役時代に西武の生え抜きとしてパ・リーグのMVPを1回、最多安打を2回、盗塁王を3回獲得している。なぜ、それほどのレジェンドがシーズン途中でクビになってしまったのだろうか。

 前出のスポーツ紙記者によれば、

「西武はNPBの球団の中で最もコンプライアンスを重視し、かつ、体面を気にするといわれています。よって、6月21日に開催される親会社の西武ホールディングスの株主総会で、株主から球団の成績不振について追及されるのを嫌がったとみられているのです。そこで必要以上に糾弾されないための“いけにえ”として、松井のクビを差し出すつもりだったのでしょう」

コンプラを重視し過ぎた結果…

 NPBのさる関係者もこう同情論を述べる。

「西武は山川穂高(32)について、女性トラブルがあったとはいえ、嫌疑不十分で不起訴になったのだから、慰留するべきでした。しかし、コンプラを重視し過ぎた結果、彼を移籍させて、戦力が大幅にダウンしました。そう考えると成績不振は球団の責任も大きかったはずですが、松井ばかりが尻拭いをさせられる羽目になってしまったのです」

 レジェンドすら大切にできない球団だということが白日の下にさらされた西武――。このままでは、次期監督の選定が難航を極めるのは必至だろう。

「週刊新潮」2024年6月13日号 掲載