中国でいま、空前の美容整形ブームが起きているという。世界4大会計事務所の一つである「デロイト トーマツ」の調査によれば、2025年に中国の整形市場は実に3500億元(約7兆円)を超えると予測。なかでも最近、注目を集めているのが“秘めたパーツ”に施されるプチ整形という。その実態を「日本の第一人者」と呼ばれる医師が初めて明かした。

 ***

 北京市内の在中国日本大使館からほど近い「東三環」エリアは俗に“美容銀座”と呼ばれ、クリニックが乱立する「美容整形のメッカ」とされる。中国の国内事情に詳しいニュースサイト「レコードチャイナ」の任書剣氏が言う。

「東三環はもともと高級ホテルやオシャレなレストランが並んだエリアですが、ここ2〜3年で大半が美容整形クリニックに取って代わられました。中国人のなかでも1950〜60年代頃に生まれた世代は『身体髪膚 授之父母(親からもらった体に手を加えてはならない)』といった教えを受け、“自然美”が一番との価値観にとらわれている。しかし1980年代以降に生まれた世代はアイドルブームやインターネットの普及などを通じ、“見た目も心を表す”といった考えが主流で、整形やタトゥーに対する抵抗感も薄れています」

 そんな新しい価値観を体現し、近年の整形ブームを引っ張るのが、現在30〜40代の「中女(オトナの女性)」という。

「中国で理想とされる女性像の一つに“真っ白な陶器のような肌”が挙げられます。実際、美容クリニックを訪れる女性たちの一番人気のメニューが『美白』や『美肌』に効果があるとされる注射や点滴治療。続いて、唇や胸へのヒアルロン酸注入も根強い人気を誇る。一方で最近、話題を集めているのが〈天使名器〉と呼ばれる、女性器へのヒアルロン酸注入手術です」(任氏)

女性たちの「不満」の核心

 中国の“中女”たちから「天使名器造成の第一人者」と呼ばれるのが、東大医学部卒で、都内・港区六本木で美容外科「ヴェアリークリニック」を経営する井上裕章医師だ。その井上氏がこう話す。

「これまで六本木のクリニックで中国からやって来た患者に“天使名器づくり”とも呼ばれる女性器形成術を施してきましたが、昨年11月、初めて中国に招待され“衝撃”を受けました。年会費が数千万円もする富裕層向けの美容サロンで行われたトークセッションにゲストとして呼ばれたのですが、会場には司会役の男性のほか、30〜40代の中国人女性が20名ほど集まっていた。驚いたのは、彼女たちの口から次々と夫婦の営みに関する不満が飛び出したことです。中国ではいまだに“男性本位”の考えが根強く、会場にいた30代の女性の一人は『夫は行為に至るまでの過程を楽しむといった行動を一切取らない。寝ている私を叩き起こして“入れて・出して”で終わり。その間、私はひたすら耐えるしかない』と話していました」(井上氏)

 また別の40代女性は「中国ではこれまで女性が性を楽しむことは禁忌とされてきたので、正直、何をどう楽しんだらいいのかも分からない」と打ち明けたという。

「そこで私が女性器形成術を説明し、その効果の一つに“感度の高まり”があることを話しました。女性の場合、出産などを経て膣が緩くなるのは自然なことですが、一方で膣にヒアルロン酸を注入することで弛緩を解消することができる。また膣内のGスポットにヒアルロン酸を注入して感度を高めることも可能です。さらに膣へのヒアルロン酸注入によって湿潤環境が保たれ、濡れやすくなるという効果も期待できます」(井上氏)

トークライブの場で手術

 井上氏の説明を聞いた女性のうち、30〜50代の3人が「実際に“天使名器”の手術を受けたい」と、その場で手を上げたという。

「女性器形成術は膣内にヒアルロン酸を注入するだけなので、手術といっても10分程度で終了する。ただ3人のうち、40代の女性はあわせて『小陰唇縮小術』も受けたいと強く希望したので、プラス30分ほどの時間がかかりました。これは膣口の周囲にあるヒダ状の皮膚(小陰唇)の左右の長さを均等にする手術で、局所麻酔をしたあとに切除して縫合します。小陰唇は膣口の“フタ”の役割を維持できれば、一部を切除しても機能的にまったく問題はありません」(井上氏)

 帰国後、井上氏は今回のセッションを企画した中国人コーディネーターを通じ、手術を受けた中国人女性たちの喜びの声に接したという。

「術後、3人の女性らは『夫との“営み”で苦痛が減った』や『女として自信がついた』などと話していたそうです。あの場では勇気を出せずに手を上げなかった他の参加者からも『手術を受けたいから、また井上先生を呼んで』との要望が出ているという。すでに別のコーディネーターからもオファーが届いており、改めて“天使名器”造成の手術を中国で行うことを検討しています。そもそも美容整形における市場規模も潜在需要も、中国は日本の何十倍というスケール。また“キレイになりたい”との欲望も日本人より切実で強いと感じた一方で、中国の美容整形ブームはようやくスタートラインについたばかりとの印象も受けました」(井上氏)

 国内で吹き荒れる“不況の嵐”もドコ吹く風。「中女」たちの欲望はむしろ加速しているという。

デイリー新潮編集部