日経平均3万円超え、2024年内の4万円突破を早くから主張していたマネックス証券のチーフ・ストラテジスト広木隆氏。dメニューマネーの新春インタビューでも、「日本株・日経平均は過去最高値を更新する」としている。氏の慧眼は高く評価されており、テレビなどのメディアからも取材、コメントを求める声が相次いでいる。

そんな広木氏が2月に上梓した本書『利回り5%配当生活』では、日本が直面している「脱・デフレ」に個人が対応するための一番の方法としての「高配当株」投資を解説。考え方だけでなく、銘柄や買い方などについても分かりやすく紹介している。

■「株は上がるもの」と主張する氏が紹介する有望な31銘柄

『利回り5%配当生活』(広木隆、かんき出版、1584円)

広木氏は本書で、日本の株式市場には2つの大きな変化が見え始めていると指摘する。それは、株価が右肩上がりに上昇するものだと理解している世代が増えてきたことと、インフレ経済になってきたことだという。

数十年にわたり投資をしてきた人たち、たとえば50代で株式投資をしている人たちは、バブル崩壊やリーマンショックなどを覚えていることもあってか、「日本の株価が右肩上がりで上昇するなどということは、夢にも思っていないのではない」(本書より)だろう。

しかし、広木氏は、「知り合いの若い運用担当者と話をすると、『運用を始めてからずっと株価が上昇しています!』と言う人が少なくない」と明かす。

もう一つの変化であるインフレ経済への転換は、今後の日本の株価の見通しを考える上で重要だ。なぜなら日本の株が30年以上にわたって下げ続けてきた最大の要因が、「デフレ経済にある」(広木氏)からだ。広木氏は、株価を押し下げてきたデフレ経済が終わり、インフレ経済に転換しつつあると指摘した上で、「明らかに日本の株価は上昇に転じるでしょう」との見通しを示している。

そんな広木氏は、ストラテジストの中でも「強気派」に分類されることが多い。たしかに氏の持論は「株は上がるもの」だし、早くから日経平均の3万円、4万円超えを主張している。そうした部分に着目すれば、その分類は間違いはないだろう。

しかし、だからといって、常に強気な姿勢だけを見せているわけでは(当然)ない。実際、日経平均が4万円をつけた時のレポートでは、短期的な割高感があると示唆。たとえ長期のトレンドでは右肩上がりなのだとしても、短期的にはピークというものがあると述べている。そのことについて、マネックス証券が運営するメディア・マネクリの連載コラムでも「それを指摘するのも僕の仕事」と述べている。

広木氏はメディア出演や、こうしたマネクリでの連載コラムのほかにも、毎週月曜日午後9時(21時)からの「広木隆のMonday Night Live」などでマーケットの分析や見通しを披露。そこでは読者・視聴者からの質問にもこたえ、投資初心者から経験者までが参考になる情報と分析を発信し続けている。

たとえば最近のコラムや連載では、最近の米国市場について問われ、「短期的には割高感」があるとの見方を示す一方、GDP=経済そのものが成長していることをして、「いずれしかるべき水準」に収まり、「右肩上がりの株価上昇トレンドは中長期的に続く」とみていると述べている。

本書では、高配当利回り銘柄と連続増配銘柄を組み合わせることで、分散投資効果を高めることができること、株は基本的には買ってそのままにしておくのがよいが、株価が値上がりしているなら売却も視野に入れるという方針などを説明。そうした考え方・方針のみならず、有望な31銘柄も具体的に紹介している。

配当をしっかり受け取って資産を増やしていきたいと考える投資家には、おおいに役に立つ一冊ではないだろうか。

文/編集・dメニューマネー編集部