「月1万円、つみたて投資やっています」「とりあえずS&P500を買っておけばいいんですよね?」

ここ数年、こんな声を聞くようになったという著者の後藤氏。老後に備えた投資・資産形成の必要性を多くの人が認識し、新NISAのスタートもあって、実際に投資を始めた人も少なくない中で上梓された本書の狙いについて、冒頭の「はじめに」で「投資に興味のなかった方に、わかりやすく、偏りなく、投資の世界を案内する」ことだと宣言。

タイトルを「教科書」としていることからもうかがえるが、しっかりと基礎から学べる内容だ。

■元日経の人気記者による分かりやすい解説本

『転換の時代を生き抜く投資の教科書』(後藤達也、日経BP、1760円)

筆者は、元日本経済新聞の記者で、X(旧Twitter)フォロワー64万人、YouTubeチャンネル登録者数27万人、note有料会員3万人の経済ジャーナリスト・後藤達也氏。本書が初の著作だという。後藤氏は2022年に日経新聞の記者をやめ、独立。経済ニュースを「わかりやすく、おもしろく」伝えることをモットーに、SNSを軸に活動している。

本書第1章の「投資が欠かせない時代に入った」では、「若いころからの投資経験は生涯の資産形成の武器になる」などとして、若者に投資の重要性を訴えるほか、自身が株式投資を始めた理由についても明かしている。

続く第2章「株・会社・決算……そもそもから考え直してみよう」では、「株主には大きくふたつの権利がある」、「株式上場はヤフオクへの出品に似ている」、「バランスシート、トヨタと任天堂を比べてみよう」などを掲げ、株式投資や企業の経済活動の裏側について、具体的な事例とともに解説している。

そして第3章の「株価はなにで動くのか」では、株価を見るための“目”(視点)として、「虫の目・鳥の目・魚の目」を提示。「スタジオジブリの価値を考えてみよう」、「妥当な株価を探る3つの指標」、「高配当にはワケがある」といった項目があり、カタい内容を親しみやすく読めるよう工夫されている。

タイトルに教科書とあり、PERやPBR、バランスシートなど経済・ビジネスの情報に触れるために必要な基礎知識についても解説されているが、本書は投資や資産運用の“ノウハウ”をまとめた本というよりは、投資をするため、大きく変わる時代を生き抜くために経済を読むための、考え方をしっかりとインストールするための本と位置付けるられるのではないだろうか。

なお、本書は完成するまでの過程で、後藤氏のnoteなどで一部の原稿を見てもらい、フィードバックを受けて修正・推敲を重ねたという。それだけに、刊行後に寄せられた感想では、分かりやすさや読みやすさなどを評価するものが多く寄せられている。

とはいえ、投資経験がある人にとって参考にならないわけではない。投資経験者からも、長く続ける必要がある投資・運用を成功に導くために、大切な考え方を再確認できるといった声が上がっている。

テレビやインターネットなどで後藤氏の解説に興味を持ったり、分かりやすいと思ったりした人は、読んでみてはいかがだろうか。

文/編集・dメニューマネー編集部