2024年は、多くの個人投資家が悲しんだ出来事で幕を開けてしまった。1月1日、経済評論家の山崎元氏が亡くなったのだ。65歳と早すぎる死だった。

長年、株式投資をしている人なら今さら説明する必要がないくらい、広く知られ、支持された山崎氏は、1981年に東京大学経済学部を卒業。三菱商事や住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)、メリルリンチ証券(現・BofA証券)など12回の転職を経て、2005年から楽天証券経済研究所客員研究員を務め、2023年3月に退職。その後は経済評論家として活動、金融・投資業界の”不都合な真実”についても度々言及し、強い信念のもと、個人投資家のみならず、業界人に対して警鐘を鳴らし続けた。

がんにかかり、外科手術をしたものの数ヵ月後に再発が判明。その過程で体験したり考えたりした、治療や保険のこと、資産や生き方・働き方について、最期まで発信しつづけた(価格は紙版、税込み)。

■再発判明で「余命は半年から1年」

  『山崎元の最終講義 予想と希望を分割せよ』(山崎元、PHP研究所、1650円)

山崎氏といえば、朝日新書の『ほったらかし投資術』や『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社)など、投資や運用に関して指南する人気の著作もあるが、本書『山崎元の最終講義 予想と希望を分割せよ』はさまざまな命題に対して、氏の見解が述べられる構成で、”人生相談本”といえる内容となっている。

たとえば「保険は、損であることを知りつつも、必要に迫られた場合に泣く泣く利用するのが正しい使い方」「根拠がないのに売買を行うと、掛かるのは手数料であり、マーケットインパクトであり、ついでに余計な精神的疲労だ」といったものや、「『スキルを身につけてから雇ってもらう』のは、順序が逆。効率が悪くて話にならない」といった記述もある。十数回にわたる転職を経験した氏だけに、投資や運用だけでなく、転職やキャリアアップについての考えについても学ぶところが多い。

また、本書でもがん保険の要否について体験にもとづく説明がされている。「がん」については患者でなくても「いつか自分もかかるかも」と気になる人は少なくないだろうから、とても参考になりそうだ。がんと向かい合った日々については、noteで詳細なレポートをしているほか、NewsPicksなどでは再発が判明して「余命は半年から1年」と分かったときのことについても答えている。

なお同時期に発売された『経済評論家の父から息子への手紙: お金と人生と幸せについて』(Gakken、1760円)は最後の書き下ろしで、氏がちょうど大学に入った息子宛に書いた形となっている。「働き方・稼ぎ方」から「お金の増やし方」、そして人材や転職についての考え方、最後の「小さな幸福論」まで、長年の経験をもとにした一貫した立場から、その考え方を明快に、分かりやすくまとめている。

こちらもあわせて読むと、これから投資家として、会社員・サラリーマンとして成功したい読者にとって参考になるはずだ。

文/編集・dメニューマネー編集部