日本球界復帰の可能性がささやかれる筒香

 メジャーの世界は厳しい。

 日本ハムからポスティングシステムを利用し、レイズに移籍した上沢直之は招待選手でキャンプに参加したが、オープン戦4試合で0勝1敗、防御率13.03でメジャー昇格が叶わず。先発陣が手薄なレッドソックスに金銭トレードで移籍が決まった。ジャイアンツとマイナー契約を結んでいた筒香嘉智はオプトアウト(契約破棄条項)を行使して退団に。日米で所属球団を探す。そして、メジャー挑戦2年目のメッツ藤浪晋太郎もオープン戦5試合登板で防御率12.27と結果を残せず、マイナーに降格した。

■どう折り合いをつけるか

 筒香に関しては、日本球界復帰の可能性がささやかれている。DeNAの主軸として活躍し、ポスティングシステムでメジャー挑戦を決断したのが19年オフ。レイズ、ドジャース、パイレーツ、メジャー傘下の球団を渡り歩いたが、なかなか結果を残せていない。昨年はレンジャーズ傘下3Aでプレーしたがメジャー昇格は叶わず、その後は米国の独立リーグでプレー。NPBの複数球団が獲得を検討したが、今年もメジャー復帰を目指して米国に渡った。招待選手としてジャイアンツのメジャーキャンプに参加していたが、オープン戦5試合出場で打率.125、0本塁打、2打点。腰の張りを訴えたことも影響し、マイナーへ降格に。傘下のマイナー組織は保有可能な選手の上限がある。筒香は漏れることが通告され、事実上の自由契約となった。

「米国に渡って5年目。32歳という年齢を考えると、メジャーでプレーするのは非常に厳しい状況です。本人は今も米国で挑戦を続けたい気持ちがあると思いますが、突きつけられた現実とどう折り合いをつけるか。日本球界復帰を選択肢に入れるなら、古巣のDeNAのほか、過去に獲得に興味を示していた巨人や長距離砲不足のパリーグの複数球団が獲得に名乗りを上げる可能性がある」(スポーツ紙デスク)

筒香はDeNAの主軸として活躍した

 横浜高校OBは筒香の心情を慮り、こう語る。

「米国で結果を残せなかったから失敗という価値観でプレーしていない。自分の力を出し切ったか、やり切ったと言えるか。お金や条件面にこだわりはないと思います。大きな覚悟で米国に渡ったので、日本に戻らず現役生活を最後までまっとうする可能性がある。もし、日本球界で再びプレーするなら、DeNA復帰の一択だと思います。ポスティングシステムで快く送り出してくれたことを恩義に感じていますし、義理人情を大切にする男なので戻ってくるんじゃないですかね」

■絶対必要な選手

 筒香が離れたDeNAは当時とチーム状況がガラッと変わっている。本職の左翼は中心選手の佐野恵太、三塁は2度の首位打者を獲得した宮崎敏郎、一塁はタイラー・オースティンと強打者で埋まっている。レギュラーの座を空けて筒香を受け入れる体制とは言えないが、球団OBは「今のDeNAに絶対必要な選手です」と力説する。

「オースティンは度重なる故障で近年は1軍に定着すらできていない。ベテランの宮崎もスタメンで出ずっぱりというわけにはいかない。長丁場のペナントレースを考えると、内外野を守れる筒香は心強い。メリットはそれだけではありません。DeNAは明るいチームカラーで勢いに乗ると止まらないですが、厳しさが足りないように感じる。勝負所でミスが相次いだ時、ピリッとした空気に引き締める選手の存在が必要です。筒香はベンチスタートでも腐らず、チーム全体を目配りできる。優勝するために必要なピースだと思います」

藤浪は「頭の回転が速く、努力家」だという。

 一方、藤浪はメッツと1年契約を結んだが、キャンプ中にマイナー降格に。傘下3Aのシラキュースで開幕を迎えることになった。オープン戦の結果を考えれば、妥当と言わざるを得ないだろう。5試合登板で3回2/3を投げ、0勝1敗2ホールド、防御率12.27。今月15日のナショナルズ戦で4四球3暴投と大荒れで、1死も取れず3失点で降板した。21日のタイガース戦でも1回を1安打1失点とピリッとしない。2三振だが奪ったが、右打者の背後を通過する大暴投で三塁走者の生還を許す場面が。米国の通信員は藤浪の置かれた現状について、こう指摘する。

「ストライクを取るので精一杯で、打者と勝負する段階までいっていない。メッツの救援陣は脆弱です。故障者が出たり、結果が出ない投手が相次いだりしたら早期のメジャー昇格の可能性がありますが、オープン戦の投球を見ると活躍できるかは不透明です。常時150キロ中盤の直球、カットボールはストライクゾーンに集まれば十分に通用しますが、制球できてこその話です。焦らずにきっちりフォームを固めてから、メジャーに昇格したほうが藤浪にとっていいと思います」

■立場が厳しくなる

 メッツと年俸335万ドル(約5億円)プラス最大85万ドルのインセンティブで1年契約を結んでおり、貴重なリリーバーとして球団の期待は大きい。メジャー40人枠からすぐに外されることは考えにくいが、マイナーの実戦登板で結果を残さなければ立場が厳しくなることは間違いない。

「メジャーで今年結果を出せなければ、日本球界復帰の話題が出てくるでしょう。もちろん、本人は米国で1年でも長くプレーしたい気持ちがあると思いますが、来年もメジャー契約を勝ち取れる保証はない。マイナー契約でメジャー昇格を勝ち取るには、心身共にタフでなければいけないし、覚悟が必要です」(前出の米国通信員)

レッドソックスに金銭トレードで移籍が決まった上沢

 米国での成功を願いつつも、将来的に日本球界復帰となればどの球団が有力候補になるか。

「古巣の阪神は先発、救援陣が共に充実しているので獲得オファーを出すことはイメージしにくい。かつて新庄剛志監督がトレードで獲得を熱望していた日本ハム、投手の能力を引き出すことに長け、大阪桐蔭でバッテリーを組んでいた森友哉がいるオリックスが有力候補になると思います」(セリーグの球団フロント)

■努力家

 藤浪は評価が難しい投手だ。阪神からポスティングシステムでアスレチックスに移籍した昨季は先発で失点を重ねたため、救援に配置転換されると11試合連続無四球を記録するなど安定した投球に。オリオールズにシーズン途中移籍すると、救援で30試合登板して2勝2敗2ホールド、防御率4.85をマークした。

 在阪スポーツ紙記者は「頭の回転が速く、努力家です。野球に対する意識が甘いと言われますが、そんなことないですよ。制球難でファーム暮らしだった阪神時代も現状を変えようと必死だった。今年はオープン戦で結果を残せませんでしたが、きっかけをつかめば投球内容がガラッと変わると思います。同学年の大谷翔平(ドジャース)に負けず、メジャーで活躍してほしいですね」とエールを送る。

 筒香、藤浪、上沢…置かれた立場は様々だが、シーズンは始まったばかりだ。日本球界を代表する選手として活躍しただけに、再び輝きを放ってほしい。

(今川秀悟)