今季が日本復帰後4シーズン目となる楽天・田中将大

 楽天・田中将大の今後のキャリアはどうなっていくのか。日米通算200勝を目前に控えた今季は調子が上がらず二軍調整が続く。楽天が上位を目指すために欠かせない右腕の動向が心配される。

 名将・野村克也氏に「マー君、神の子、不思議な子」と呼ばれた剛腕が、大きな分岐点に差し掛かっているようだ。大記録まで残り3勝で迎えた今シーズン、記録達成は時間の問題だと思われていたが、開幕から約4週間が経っても、まだ一軍での登板がなく時間だけが過ぎ去っている。

「昨オフの手術の影響も心配されたが春季キャンプには予定通り参加していた。開幕早々の大記録達成も予想されたため準備も進めていたが、今のままでは夏までに達成できるかわからない。どうしたら良いのか、こちらが聞きたいくらい」(楽天関係者)

 田中は昨年10月に右肘クリーニング手術を受けたが今春キャンプは一軍組に参加。オープン戦では2月24日の中日戦(沖縄・北谷)が1回無失点、3月6日の阪神戦(甲子園)は2回1失点、13日のオリックス戦(静岡)は3回1失点という内容だったが、数字以上に調子が上がってこなかった。

 その後は二軍で調整を続け、3月20日イースタン・リーグのDeNA戦(4回途中3失点/自責点は2)での登板を最後に実戦のマウンドからは遠ざかっている。4月11日には永井怜投手コーチが「コンディションを最優先にするのと本人の感覚、二軍のピッチングコーチ、トレーナー含めての判断でもう少し期間をおいた方がいいんじゃないかという決断になった」と語り、今後の登板は当面の間、未定であることを明かした。

「オープン戦では最速146キロを記録するなど球自体は悪くなく、手術の影響は感じさせなかった。問題は技術より気持ちの面のようにも感じる。練習中から笑顔が少なく、つまらなそうな表情にも見えた。気迫を前面に出して気持ちで投げるタイプだけに心配です」(楽天OB)

 田中にとって昨シーズンのオフには様々なことが起こった。右肘手術はもちろん日本球界復帰を後押してくれた石井一久監督が退任。そして安楽智大(現在はメキシカンリーグでプレー)のパワハラ事件発覚時には関与疑惑まで取り沙汰され、本人が「意識が甘かった」とSNS上で謝罪するまでの出来事となった。

「石井前監督は調整はもちろん、登板機会に関しても田中本人の意向を最大限に取り入れていた。監督が代わり異なる環境になったことで戸惑いがあるはず。また安楽のパワハラ事件では、とばっちりを受けてイメージダウンにつながった。大きな不満が募っていても不思議ではない」(元楽天担当記者)

 会費1万8000円で500人限定での募集をしている田中の個人ファンクラブ。日本への復帰初年度は即完売状態だったのが今年は開幕後も募集中だ。また個人のYouTubeチャンネルの再生回生も激減しているという。ファンからの“人気低下”が数字にも顕著に現れてしまっている。

「優勝請負人として楽天復帰したが期待通りの投球はできていない。2年連続で契約更改が越年となったこともファンの気持ちを逆撫でしているのかもしれない。また以前の活躍が衝撃的だっただけに、当時の幻影を誰もが追いかけている部分もあるでしょう」(元楽天担当記者)

 2006年の高校生ドラフト1位で楽天に入団した田中は、プロの壁にぶつかったこともあるが、厳しい世界の中で1年目から結果を残してきた。高卒ルーキーの2007年にいきなり11勝をマークすると、2011年には最多勝(19勝5敗)、最優秀防御率(1.27)、最高勝率(.792)と投手三冠に輝き沢村賞も受賞した。

 2013年には黒星なしの最多勝(24勝0敗)、最優秀防御率(1.27)、最高勝率(1.000)と“神がかり的な成績”で再び投手三冠と沢村賞を手にし、球団史上初となる日本一にも大きく貢献。その後はメジャーリーグの名門ヤンキースに移籍し、7年間で78勝を挙げるなど日本を代表する投手として活躍した。

 そして、コロナ禍真っただ中の2020年オフに楽天に復帰。レジェンド右腕の帰国はプロ野球界の大きな話題となったが、楽天に戻ってからは精彩を欠く投球も目立ち、成績が徐々に低下。33歳となるシーズンの復帰で「まだできる」と期待が大きかったぶん、ファンの落胆も大きかったはずだ。

「ベテランになって衰えてくる部分があるのは仕方ないが、カバーできるだけの技術があり戦力としてはまだ大いに期待できる。また日米で修羅場をくぐった経験は若手の多いチームには何よりの力になるはず。楽天にとって絶対に必要な存在で引退するまでいて欲しい」(楽天関係者)

 かつてのように力でねじ伏せる投球はできなくても多彩な球種を操り、駆け引きを駆使して打者を打ち取ることができる。ローテーション1番手の投手ではなくとも、まだ戦力になれるのは間違いないという声も多い。

「『まずは日米通算200勝までの3勝を挙げて欲しい』という人がいるが、それは過小評価。技術と精神面が噛み合えば、まだ二桁勝てるだけの力がある。今は苦しい時期かもしれないが必ず上がってくるはず。周囲の雑音をかき消して、生き様をマウンド上で見せて欲しい」(楽天OB)

 記憶と記録の両方で印象に残るスーパースターがこのままで終わるはずはない。今シーズンはまだ始まったばかり、2006年夏の甲子園で斎藤佑樹とともに日本中を沸かした右腕は今シーズン中に日米通算200勝を達成し、チームの勝利に貢献してくれるはずだ。誰もがマー君の完全復活を待っている。