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 新NISA(少額投資非課税制度)では、世界株型や米国株型の投資信託に積み立てておけば安心という見方は多い。だが、好調な日本株に投資する手もあるはずだ。そこで東証株価指数(TOPIX)を上回る好成績のアクティブ投信のうち、新NISAでも買えるものを専門家に調べてもらった。

 この1年で株価は大きく値上がりした。昨年3月末に2万8千円台だった日経平均株価はいま3万8千円台で推移している。特に2024年に入ってから好調で、2月はバブル絶頂期につけた史上最高値を更新して4万円台に乗り、3月22日には4万888円をつけた。

 カバーする銘柄がもっと多く、市場全体の動きをより映しやすいとされるTOPIXも同じく好調だ。バブル期の1989年12月につけた史上最高値2884.80ポイントこそまだ更新できてはいないものの、日経平均が史上最高値をつけた今年3月に2800ポイント台に乗り、現在は2700ポイント台と高値圏で推移する。

 1月に新NISAがスタートし、銘柄選びに悩む投資家もいるだろう。株価の値上がりをみて、個別株を買おうと思っても日本の上場会社だけで3千社以上あり、業績や値動きをチェックするだけも大変だ。

 そこで人気があるのが投資信託だ。一つの投信でも、複数の銘柄や資産にパッケージで投資するので個別株に投資するよりもリスクを減らすことができる。投資のプロに運用を任せることができたり、比較的少ない額から投資できたりする点もメリットだ。

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 ただし、投信にもいろいろある。国内には上場投資信託(ETF)を含めて6千本近くの投信があると言われる。新NISAでは世界中の株式に分散投資できたり、米国市場の値動きに連動したりするタイプの商品が人気だが、前述したように日本株も好調なので、日本株に投資するタイプの商品に関心を持つ人も少なくないはずだ。

 投資するのだったら、やっぱり運用の成績がいいもののほうがいい。そこで今回、調査会社のモーニングスター・ジャパンに、日本株に投資するタイプの投信のうち、TOPIXを上回る成績を挙げた「アクティブ型」のファンドがどのくらいあるかを調べてもらった。

 すると、今年3月末までの直近1年間でTOPIXのリターン41.3%(収益率=分配金を再投資した場合の基準価額の騰落率)を上回る投信は56本あった。このうち、上位30銘柄が下の表だ。

 アクティブ型は、それぞれ独自の視点から調査や分析を行って組み入れ銘柄を決め、日経平均やTOPIXといった市場全体の値動きを示す株価指数の値動きを上回る成績を目指す。一般的に、指数に連動した成績をめざす「インデックス型」のファンドよりも信託報酬など手数料は高いものの、より大きなリターンが得られる可能性がある点が魅力の一つだ。

 今回の調査では金融庁や投資信託協会が示している新NISAの対象商品のうち、日本株を主な対象としてアクティブ運用を行い、1年以上の運用実績がある204本を対象とした。金融機関にお金を預けて運用をお任せする「ファンドラップ」や確定拠出年金の専用ファンドのほか、業種・地域特化型や通貨選択型、ブルベア型などの投信は対象から除いてある。

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 ランキングのトップは三井住友トラスト・アセットマネジメントの「ニュー配当利回り株オープン」(愛称・配当物語)。直近1年のリターンは55.3%で、TOPIXの41.3%を10ポイント以上上回った。業績や配当の安定性を重視し、予想配当利回りが市場の平均よりも高い銘柄や、増配などによって株主還元策の強化が予想される企業を中心に投資する。運用会社の月次レポートによると、組み入れ銘柄の上位には三菱UFJフィナンシャル・グループやトヨタ自動車、ソフトバンクなどが入っている。

 2位は三菱UFJアセットマネジメントの「日経平均高配当利回り株ファンド」で、リターンは54.6%。日経平均株価の採用銘柄225社の中から、予想配当利回りの上位30銘柄に投資する。月次リポートによれば、3月末時点の組み入れ銘柄トップは三井住友フィナンシャルグループだった。この投信はモーニングスター社が実施する表彰制度「モーニングスター・アワード2024」で日本株式部門の優秀ファンド賞を受賞している。

 3位はカレラアセットマネジメントの「カレラ成長日本列島株式ファンド」。投資の対象は、事業の内容や成長性、収益性、財務の健全性などを考慮して決めるという。3月末時点の組み入れ銘柄上位には三菱重工業やトヨタ自動車、デンソー、三菱商事などが入っている。1年間のリターンは53.8%だった。

モーニングスター・ジャパンの元利大輔マネジャー・リサーチ部長は次のように分析する。

「直近1年間の上位には『高配当』や『バリュー(割安)』といった株価の割安度合いを重視する銘柄に投資するタイプの商品が多い。東京証券取引所が昨年、株価純資産倍率(PBR)が1倍割れしている企業に是正を要請したこともあり、資本効率の向上や株主還元姿勢の強化に乗り出す取り組みが活発になりました。そうした銘柄を組み入れるファンドのパフォーマンスが向上するのは当然とも言えます。その意味では、上位にはトガった戦略を打ち出しているような投信は多くないかもしれませんね」

 元利さんによれば、投信をみる上ではもっと長い期間の成績を調べることも重要だという。そこで同じように、日本株に投資するアクティブ型の投信のうち、直近5年間のリターンを調べてもらった。

 その結果、3月末時点で5年以上の運用実績がある179本のうち、TOPIXの5年間のリターン(年率14.4%)を上回ったファンドは43本あった(下の表)。元利さんは言う。

「直近1年の上位に比べ、中小型株や成長株に投資するタイプが上位に入るなど、より多彩な印象です。上の表には入っていませんが、野村アセットマネジメントの『ノムラ・ジャパンオープン』やアセットマネジメントOneの『One国内株オープン(年2回決算型)』といった『主力ファンド』の位置づけの商品もTOPIXを上回っています」

 1位は明治安田アセットマネジメントの「明治安田セレクト日本株式ファンド」(愛称・初くん)で、5年間のリターンは年率で20.6%。今後成長が期待できる産業分野の中から、継続して成長が期待できる企業に投資する。3月末時点の組み入れ銘柄トップはトヨタ自動車で、MTGや東京エレクトロンなどが続いた。元利さんが言うように、モーニングスターの区分けでは「中小型ブレンド型」に分類される。ブレンド型は、割安株と成長株をバランスよく組み合わせて投資するタイプの商品だ。

 2位は野村アセットの「小型ブルーチップオープン」。5年間のリターンは同20.5%だった。その名の通り、中小型株を主な投資の対象として、中長期的な成長性やバリュエーションを考えて銘柄を選ぶという。月次レポートによると組み入れ上位銘柄には、横浜ゴムや住友不動産、東洋炭素、いすゞ自動車などが入っている(3月末時点)。

 3位は三井住友DSアセットマネジメントの「大和住銀DC国内株式ファンド」だった。主に企業価値に対して株価が割安な銘柄に投資する。5年間のリターンは同20.5%だ。3月末時点の組み入れ銘柄トップは東京UFJフィナンシャル・グループだった。

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 ただし、直近1年や5年の成績がよくても、これからどうなるかは分からない。それでは、日本株に投資するアクティブファンドを選ぶうえでどんな点に注意すればよいか。元利さんは次のように話す。

「アクティブ型のファンドは、インデックス型を上回ることが少ないのは事実です。担当するファンドマネージャーも、割安株を発掘するのが得意だったり、高配当株や成長株を見つけるのに秀でていたり、それぞれ得意分野も違います。ですから株価指数を上回る成績をいつも残せるとは限りません。一方で、10年単位でみると3割くらいの確率で勝てるとも言われています。インデックス型のファンドは手数料の分だけ、株価指数そのものに引けを取りますが、アクティブ型はいいファンドが見つかれば株価指数を上回ることが可能です。そう考えると、探す努力をした分だけ報いが得られると考えることができます」

 投資にあたっては、複数のファンドを組み合わせるとよいという。

「日本株が対象のアクティブファンドにも、大型株型や中小型株型、割安型や成長型、さらにそれらを組み合わせたブレンド型まで様々なタイプがあります。いま人気の全世界株型や米国株型も含めて、組み合わせて投資すればそれぞれのリスクを相殺することができます。その上で運用戦略や過去の成績などを見て判断するとよいでしょう。最近は紹介サイトにファンドマネージャーがコメントを出したりするなど情報公開も充実してきていますから、参考にしてみましょう」

(AERA dot.編集部 池田正史)

※投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。