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 東京都や大阪府の高校授業料無償化など、助成が拡充したことで、私立高校に通う金銭的な負担は減っています。では私立高校に通う場合と公立高校に通う場合とで、かかるお金はどのくらい違うのでしょうか。また、高校や大学入学にはどの程度の備えがあればいいのでしょうか。自身も子ども3人を育てたファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに聞きました。

――東京都や大阪府の高校授業料無償化をはじめ、高校生への支援が増えていますが、私立高校と公立高校、学費にはどのくらいの差があるのでしょうか。

 国の就学支援金により、年収910万円未満の世帯(両親のうち1人が働き、高校生・中学生の子どもがいるケース)では、公立高校の授業料は無償化されています。私立高校については各都道府県によって支援制度が違うので一概には言えませんが、最近では東京都や大阪府以外でも支援の手厚い自治体が多くなっています。

 気になるのは授業料以外の部分ですね。文部科学省の「子供の学習費調査」(令和3年度)によると、授業料の負担がなくなっても、修学旅行費、学用品代などで1年間にかかる学校教育費は、公立高校で年25万7141円(授業料を含むと年30万9261円)、私立高校で年46万1919円(授業料を含むと年75万362円)となっています(図6)。

令和3年度子供の学習費調査(文部科学省)から作成。同調査の対象は全国5万2903人(1600校)、うち有効回答数2万7257人

 授業料を除いても私立高校の学費のほうが年20万円以上高い計算になります。ただ、この数値だけをみて「私立高校は高い。公立高校は安い」という考えはやめたほうがいい、と私は考えています。

――どういうことでしょうか。

 たとえば私立高校のなかには、学校に塾の講師が教えに来て、受験指導をしてくれるところもあります。私の息子たちが通っていた私立高校もそうでした。通塾すると1科目につき1カ月で2万円ぐらいかかるところを数千円ほどとお得でした。塾までの交通費も時間もかかりません。

 いま、とくに私立大学を中心に、推薦型選抜や総合型選抜で進学する生徒の割合が増えています。推薦型選抜に力を入れている私立高校であれば、受験料は1校分でいいし、塾代も安くすむ。たとえば公立高校に行って就学支援金で授業料はかからないけれども、通塾して、大学受験を何校もするケースと比較すれば、結果的に私立高校のほうが安い、つまり、金銭的負担が私立高校と公立高校で逆転することも起こりえます。

――私立と公立の学費の比較は、一概にはできないということですね。

 はい。ただ、一つ、念頭に置いておかないといけないことは、公立中学から私立高校に進む場合、「私立だからお金を払うもの」という暗黙のコンセンサスを感じることがあるかもしれません。

 例えばお子さんが何か体育会系の部活をしている場合、公立中学では遠征費もいくらまでなら払えるかを調査してから請求されていたのに、私立高校に行ったら、必要金額を強制的に徴収されることがあります。野球部だったとして、甲子園に出られるような強豪校だったら後援会が援助することもあるかもしれませんが、普通は親が出します。体育会系でなくても、ブラスバンド部なども遠征費、修繕費などが高くなります。

――では、高校や大学に入るまでに、どれぐらい貯蓄があったほうが良いものでしょうか。

 今は助成金が手厚いので、高校入学のための貯蓄は、そこまで必要ないでしょう。私立大学の場合は、一般的に文系は4年間で500万円、理系の場合は6年間で1000万円くらいかかるとアドバイスしています。理系は文系よりも学費が高く、また、修士課程を含めて6年間通うことを想定したカリキュラムになっていることも多く、その分、多く必要になります。国立大学の場合は、文系と理系で基本的に学費は変わりませんが、かかる学費は300万円ほどなので、貯蓄がなくても、大学に行かせながら半分ぐらいの学費は家計から出すことも可能だと思います。

 高校の場合、これは公立校に行っても私立校に行っても同じですが、学校の授業料以外のところでもお金がかかってきます。まわりがiPhoneを持っているから私も欲しい、洋服や靴にもこだわりが出てきます。そういう意味では、中学までに節約して貯蓄しておくべきでしょう。

(構成/永野原梨香)