札幌を指揮するペトロヴィッチ監督

 開幕から3カ月が経過したJ1リーグは、序盤の大混戦から徐々に上位と下位の差が開きつつある。全38節中の17節までを終えた今、優勝争いに続いて今度はJ1残留争いに目を向けたい。まだ折り返し前だが、すでに危険水域にあるチームはどこか。

 最下位の20位に沈むのは、北海道コンサドーレ札幌(勝点11:2勝5分け10敗)だ。2018年からチームを指揮する“ミシャ”ペトロヴィッチ監督の下、4位、10位、12位、10位、10位、12位とJ1中位の安定した成績を残し、それまでのエレベータークラブから脱した感があったが、今季はその攻撃的スタイルが影を潜めるとともにリーグ最多の36失点と守備崩壊が続いている。Jリーグ公式スタッツによると、1試合平均パス数はリーグ3位の551.9本で、平均ボール支配率も同5位の55.2%を記録しているが、ゴール期待値はリーグワーストとなっている。

 昨夏に攻撃のキーマンだった金子拓郎が海外へ渡り、冬のオフにも主力数人が流出した上に、開幕から怪我人が続出する苦しい台所事情が、そのまま結果に現れてしまっている。この非常事態にクラブは「今シーズンの最後までミシャ監督と戦う決意をしました」と声明を発表したが、直後の試合で今季昇格組の東京ヴェルディに3-5で敗れるなど、流れは良くない。守備の再整備と故障者の復帰が浮上への材料になるが、クラブとしても今夏の移籍期間に得点力のあるFWを獲得して起爆剤にしなければならない。

 札幌と同じ勝点で得失点差で19位なのが、京都サンガF.C.(勝点11:2勝5分け10敗)だ。曺貴裁監督の下、2021年にJ2で2位となって12年ぶりのJ1昇格から16位、13位と粘り強く戦ってきたが、上位進出を目指していた今季は開幕から黒星が先行。景観も非常に素晴らしいサッカー専用スタジアムを持ちながら、ホームでは8戦未勝利(1分け7敗)と庇護できない状態となっている。

 開幕前に10人の新戦力を迎え入れながらレギュラー定着0人で、リーグ最少の13得点(1試合平均得点0.8)でリーグ断トツワーストのシュート決定率6.2という攻撃陣が誤算。今後、CB鈴木義宜、左SB鈴木冬一、ブラジル人FWマルコ・トゥーリオらがしっかりとチームにフィットし、昨季10得点の豊川雄太、同7得点の原大智のFW陣が結果を残せるか。クラブは大熊清氏を新GMとして招聘したが、果たしてどうなるか。札幌同様に夏の移籍期間での新たな戦力獲得も必要になるが、このまま低迷が続けば監督交代の決断もやむを得ない。

 現状、札幌と京都に危険信号が灯っているが、今季からはJ1の下位3クラブがJ2自動降格となる。そして、その降格圏内3チーム目となる17位が、湘南ベルマーレ(勝点14:3勝5分け9敗)となっている。2018年からJ1で13位、16位、18位、16位、12位、15位と残留争いを繰り広げながら残留を続けてきたが、今季はこれまで以上に苦しい戦いとなっている。

 選手個々を見ると、田中聡、畑大雅、平岡大陽といった20歳過ぎの若手が奮闘を続け、18歳のFW石井久継もデビューを果たしている点、さらに昨夏にチームに加わった23歳FW福田翔生が6得点と覚醒気配だが、町野修斗、大橋祐紀のかつての2トップが流出した影響は隠せず。まだまだ攻撃が迫力不足で、善戦しながらもなかなか勝ち切ることができていない。昨季はシーズン終盤6試合を4勝1分け1敗と立て直してJ1に残留したが、それよりも早い段階でチーム全体が危機感を持たなければならないだろう。

 消化試合が1試合少ないが、17位のサガン鳥栖(勝点14:4勝2分け10敗)も苦しい状況は同じだ。2017年からJ1で8位、14位、15位、13位、7位、11位、14位という成績。毎年のように主力が他クラブに引き抜かれ、降格候補に挙げられながらも“残留力”を発揮して来たが、果たして今季はどうなるか。リーグトップの総走行距離を誇るボランチの河原創が中盤で奮闘し、新助っ人のブラジル人FWマルセロ・ヒアンも徐々にチームにフィットして能力の高さを見せている。

 だが、「試合内容が良くても結果が出ない」という状況は、実は危険を伴う。今後は「内容が悪くても勝点を奪い取る」試合をいかに増やせるか。横山歩夢、樺山諒乃介、中原輝、本田風智という2列目の人材のコンディション整備とともに、球際の厳しさを徹底し、20チーム中18位の1試合平均1vs1勝利数、さらにリーグ最下位の1試合平均こぼれ球奪取数を改善する必要がある。

 この4チームに加えて、16位のジュビロ磐田(勝点18:5勝3分け9敗)、15位のアルビレックス新潟(勝点19:5勝4分け8敗)も降格圏から近い距離にいる。開幕から例年以上の大混戦状態が続いた中、磐田と同じJ1昇格組のFC町田ゼルビアは首位を走り、東京ヴェルディも11位(勝点24:5勝9分け3敗)と奮闘を続けており、今季の残留争いは熾烈を極めることが予想される。代表ウィーク明けの第18節(6月15日、16日)から第29節(8月31日、9月1日)まで、2カ月半で12試合を行う日程。酷暑が予想される夏場の戦いが、J1残留へ向けて非常に重要となることは間違いない。苦しい戦い、危機を乗り切るチームの一体感、5人交代制の中での選手層の厚さと監督の選手交代術、さらに真夏のラッキーボーイに注目したい。(文:三和直樹)