大分市の南に位置する、戸次(へつぎ)地区は、大野川がもたらした、ミネラルたっぷりの肥沃な土が堆積していることから、古くから農業が盛んな地域として知られています。

なかでも「戸次ごぼう」は、まっすぐで、やわらかく、風味豊かな味わいで、大分県のみならず、福岡や関西にも出荷され、県内外でも注目されている名産品です。

皮を剥いたたくさんの戸次ごぼう
やわらかい食感と独特の香りが特徴の「戸次ごぼう」。別名「白肌ごぼう」とも呼ばれ、茶色い皮を剥くと中は真っ白。5〜8月頃までに本格的な出荷を迎えます。

戸次を拠点に地域貢献を。名物「ごぼまん」とは?

そんな戸次ごぼうを多くの人に知ってもらおうと、2005年に誕生したのが、名物「ごぼまん」。その特徴は、ふんわりとした皮に包まれたごぼう餡。甘辛く味付けされたごぼうや人参、そして鶏肉が三位一体になった、ほっとする味わいです。

半分に割った「ごぼまん」
手のひらサイズの「ごぼまん」150円。おやつや軽食、お土産にもぴったり。

小さな販売所から少量生産で始まった「ごぼまん」ですが、そのおいしさはじわじわと噂になり、今では大分市内のスーパーや川の駅、通信販売でも希望者が絶えない人気商品になりました。

〈戸次ごんぼの会〉販売所の看板

戸次を代表する名産品となった「ごぼまん」を手づくりしているのは〈戸次ごんぼの会〉。“ごんぼ”とは、戸次地区で呼ばれるごぼうの方言で、親しみを込めて名づけられたそう。地元の女性たちが集まり、2005年に結成されました。

ごぼまんを手にする〈戸次ごんぼの会〉のメンバー7人
現在メンバーは12名。中戸次にある加工所兼店舗では土日限定で販売しています。

「ごぼまん」誕生の背景について、教えてくれたのは、代表の金子ひとみさん。

「昔は、この一帯に多くのごぼう農家があったのですが、高齢化や住む人の減少などで少なくなってしまいました。それでも、戸次ごぼうは地域の大事な財産です。戸次のおいしいごぼうを広めるためには、どうしたらいいかと考えた結果、『ごぼまん』を思いついたのです」

製造工程をチェックする金子ひとみさん
〈戸次ごんぼの会〉代表の金子ひとみさん。メンバーは戸次在住者で構成され、平均年齢は70歳以上。2025年には20周年を迎えます。

金子さんをはじめ、〈戸次ごんぼの会〉の思いは着実に広まっており、取材時にも「朝ごはんは、『ごぼまん』と決めているの」と、1か月分まとめ買いをするお客さんが訪れるなど、地域でも親しまれてきた名物でもあります。

個別に包装されたごぼまん
添加物が入っていないので、常温保存は2日、冷蔵保存は3日、冷凍保存では3か月程度もつので、まとめ買いも可能です。

また、商品が売れることで「ごぼう農家さんや、地域の農業にも同時に貢献することができているのが、うれしい」と金子さんは話します。

手包みで丹精を込めて。戸次ごぼうの魅力を届ける

メンバーが談笑しながらごぼまんを包んでいる

調理場にお邪魔すると、テキパキと作業しながらも「ここに来て、おしゃべりするのが楽しみなのよ」と和やかに談笑する〈戸次ごんぼの会〉のみなさん。年に一度、みんなで旅行に行くのも楽しみのひとつだとか。

生地を丸める作業中の手元
10分ほどこねた生地はひとつずつ量り、空気が入らないようにまるめます。

餡は戸次ごぼう、人参、鶏肉を、地元で醸造したしょうゆと酒、ぴりっと効いた唐辛子で味付けして、40分以上かけて炒めていきます。

大きな鉄鍋で餡の材料を炒めている
大きな鍋をかき混ぜるのは、なかなかの重労働。飴色になるまでじっくりと炒めます。
完成した餡
1回で大体300個分の餡ができるそう。加工場にはごぼうの香りが一気に広がります。
丸められた生地がきれいに並んでいる
ひとつひとつ丁寧に手包みでつくられる「ごぼまん」。

形成したまんじゅうは、専用の蒸し器を使ってふっくらと蒸します。気温によって膨らみ方が変わるため、夏と冬では二次発酵の時間を変えるなど、つくり方にもこだわっています。

発酵器に入れる

抜群のチームワークで作業を行うみなさん。持ち場は決めず、あうんの呼吸でフォローし合いながら「ごぼまん」を仕上げていきます。

平らにした生地に餡をのせた状態
一次発酵させた生地に餡を入れて、ホイロで二次発酵させます。
蒸し上げの様子

蒸したての「ごぼまん」を取り出したら、乾燥しないように「もろぶた」と呼ばれる専用の箱に並べていきます。

もろぶたに並べられたごぼまん
「完成したごぼまんは、適度に風に当てて冷ますと、つやっと光沢が出てくるんですよ」と、金子さん。
蒸し上がったごぼまんを手にしている

加工所兼店舗での〈ごぼまん〉の販売日は週末のみ。大量生産はできませんが、「地元のお客さんの声を大切にしている」という金子さん。

「ごぼまん」が知られるようになると、「揚げてみてはどうか?」「甘いのはないのかね?」などと、さまざまな声が聞かれるようになったといいます。その声をかたちにするべく、商品開発にも挑戦している〈戸次ごんぼの会〉。揚げごぼまん、ワッフル、あんまんなど……「ごぼまん」をきっかけに誕生し、地元の人から親しまれる商品はほかにも。

包装された「だいなんワッフル」
「ごぼまん」をワッフルに。新名物の「だいなんワッフル」160円。バターの風味とごぼうがマッチして、お客さんにも好評。
「だいなんワッフル」を焼く様子
「だいなんワッフル」は戸次を有する大南地域の食材や食文化を後世に残すためのプロジェクトとして創出された一品。大分市の認定を受けた大南地域の各店舗で購入することが可能。
パッケージングされた「パリパリごんぼ」
掘り出したばかりのごぼうをスライスし、パリッと揚げた「パリパリごんぼ(40g)」350円。試作を重ね、2年がかりで販売までこぎつけた自信作だそう。

戸次ごぼうを活用して、地域の農業と食文化を守り続ける〈戸次ごんぼの会〉。「ごぼまん」は店頭や大分市内での販売のほかに、冷凍にて全国発送が可能です。県内でのイベントや店舗への出店、販売スケジュールなどは、公式ホームページやインスタグラムを要チェック。
ひとつひとつ丹精込めてつくられる「ごぼまん」はもちろんのこと、〈戸次ごんぼの会〉から生まれた新名物にも注目。まもなく旬を迎えるこれからの時期に、ぜひ一度味わってみては?

2つのもろぶたにきれいに並べられた、出来立てのごぼまん
Information
戸次ごんぼの会
address:大分県大分市中戸次4420-2
tel:090-8355-0046
access:JR大分駅から車で約25分
営業時間:毎週土・日曜 10:00〜16:00(売り切れ次第閉店)
※販売日以外のご注文は相談可能です
web:戸次ごんぼの会
Instagram:@goboman2016

*価格はすべて税込です。

credit text:大西マリコ photo:黒川ひろみ