毎年発行されているJLPGA公式女子プロゴルフ選手名鑑。自分のゴルフにも役立つかもしれない使い方とは?

女子ツアーの上位には飛距離より正確性が高い選手が多い

「JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)公式女子プロゴルフ選手名鑑2024」が発売されたので、JLPGAオフィシャルグッズショップで購入しました。

 女子プロゴルフ選手名鑑はかつて非売品で、メディア各社に配布するために作られていました。ゴルフ雑誌の編集部や新聞社のスポーツ局の本棚には各年度の選手名鑑が一冊ずつ並んでいました。

 その選手名鑑が女子ツアー人気の高まりによって市販されるようになり、B5判・180ページの書籍が定価1760円で販売される時代が来るとは想像していませんでした。

読み込めば読み込むほど面白い女子プロゴルフ選手名鑑
読み込めば読み込むほど面白い女子プロゴルフ選手名鑑

 2024年1月にスタートしたTBS系ドラマ「不適切にもほどがある!」が話題を集めていますが、1997年に出版社に入社した筆者が1999年にゴルフ雑誌の編集部に異動した当時、編集部の先輩たちは女子プロゴルフ選手名鑑のことを怪獣図鑑と呼んでいました。ホント不適切にもほどがあります。

 それが2003年9月に当時高校3年生だった宮里藍選手が「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント」でアマチュア優勝を達成したことで、女子ツアーに対するイメージが一気に変わりました。

 翌2004年には宮里選手と同学年の横峯さくら選手がプロテストに一発合格を果たし、2005年には1学年下の上田桃子選手と諸見里しのぶ選手がプロ入会。2006年は2学年下の有村智恵選手と笠りつ子選手がプロ入りし、宮里選手の背中を追いかけ始めました。

 その流れが20年以上ほぼ途切れることなく続いているからこそ、ロレックスランキング(女子ゴルフ世界ランキング)のトップ100の中に日本人選手が18人もランクインするという選手層の厚さを作り上げています(2024年3月27日時点)。

 ロレックスランキングで畑岡奈紗選手、古江彩佳選手に次ぐ日本勢の3番手に位置しているのが2023年シーズンの年間女王・山下美夢有選手です。

 選手名鑑で山下選手の部門別ランキングを見ると、フェアウェイキープ率1位(79.0841パーセント)、平均パット数1位(1.7256ストローク)、平均バーディー数1位(4.3828個)、平均ストローク1位(69.4322ストローク)と輝かしい数字が並んでいます。

 でも、ドライビングディスタンスは53位(238.26ヤード)なんですね。近年は飛距離が出る選手が有利なパワーゴルフの時代といわれていますが、山下選手は飛距離ではなくショットの正確性で年間女王のタイトルをつかんだわけです。

 これはメルセデス・ランキング2位の申ジエ選手も同じで、ドライビングディスタンス45位(239.45ヤード)にもかかわらず、ショットの正確性とショートゲームの精度の高さで好成績を残しています。

 アマチュアゴルファーは飛距離アップがスコアアップにつながると思っている人が多いですが、少なくとも日本の女子ツアーに関しては飛距離が出る選手が好スコアを出しているわけではないことが分かります。

スタッツからプレースタイルを読み解くことができる

 山下選手や申選手はすべてのホールでティーショットがフェアウェイに飛び、セカンドショットがグリーンに乗り、バーディーパットが入ればバーディーで、外れたらパーというゴルフをしているイメージがありますが、部門別ランキングを見るとそうではないことも分かります。

 フェアウェイキープ率1位の山下選手が79.0841パーセントですから、5回に1回はフェアウェイを外している計算になります。

 パーオン率は5位(74.6411パーセント)ですから、4回に1回はパーオンを逃していることになります。

 リカバリー率は2位(69.3920パーセント)ですから、パーオンを逃した10ホール中3ホールはボギーをたたいていることになります。

 2年連続年間女王の山下選手でさえもフェアウェイを外したりグリーンを外したりしているのですから、アマチュアの腕前で多くのナイスショットを望むのは希望が高すぎるのです。

 そんなことを、女子プロゴルフ選手名鑑を読むたびに考えるのですが、フェアウェイキープが14ホール中1ホール、パーオンが18ホール中1ホールのようなラウンドが続くと、「山下選手と同じ確率とはいわないまでも、せめてもう少し確率が上がってもいいんじゃないの」と思わずにはいられない日々を過ごすことになります。

保井友秀