2018年の導入以来、初のマイナーチェンジを受けたジャガーIペイス RダイナミックHSEに乗った清水草一さん、嶋田智之さんの本音やいかに? 今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗!


「BEVデザインのお手本」清水草一

ジャガー初のピュアBEVとして登場したIペイス。すでに日本導入から5年になろうとしているが、相変わらず最大の美点は、フォルムの美しさだと断言しよう。特に斜め後ろから見た時の、気品に満ちたスポーティな造形は、新世代ジャガーを象徴している。クイッと突き出たノッチ部と、その下のシャープなテールランプ&ジャガーのエンブレムのハーモニーが、クルマ好きの美意識の秘孔を突く。

上陸後も前後モーターのトルク配分やバッテリー管理などの細やかな改良を年々加えてきたIペイス。一充電での走行可能距離はWLTCモードで438km。2023年9月のマイナーチェンジを伴うフェイスリフトより、オンライン販売のみに移行している。

Iペイスは、BEVのあるべきフォルムのお手本を世界に提示した。SUVの床下にバッテリーを積めばいいというものではない、BEVはBEVなりの美しさを追求すべきだと身をもって示したことで、世の流れはその通りになった。すばらしいじゃないか。

ドライブフィールは、以前と変わらずパワフルで上品だが、登場から5年の歳月が流れたため、航続距離に物足りなさを感じるようになった。そのあたりに関しては、来年以降登場するはずのジャガー第2世代BEVに期待しよう。性能はもちろんのこと、デザインもとてもゴージャスなものになるらしい。




「依然として一歩リードしてる」嶋田智之

やっぱり今になってもちょっとばかり衝撃的な存在なんだよな、と思った。このクルマは、とてもいい。

あれは4年半ほど前のこと。僕に一番はじめにBEVの楽しさ、気持ちよさを叩き込んでくれたのは、このジャガーIペイスだった。ワインディング・ロードではビックリしちゃうくらいよく曲がるし安定してるしコントローラブルだし、サーキットではFタイプを追いかけ回せるくらいに速いし、街中では静かで落ち着いてて快適だし、片道150km少々をわりと元気よく走り切って無充電でそのまま復路も元気よく走り切れそうな勢いだったからさほど不安感はなかったし。モーターの強大な駆動トルクと重心位置の自由度を最大限に活かすとこんなに素晴らしいクルマができあがるのか、と心の底から感服させられたのだった。

その印象は今も変わらない。それどころか熟成が効いて旨味まで増し、歴代ジャガー同様の“らしさ”まで手に入れてるように感じられる。今や優れたBEVはほかにもあるが、その点、Iペイスは一歩リードしてるのでは? と思う。うん。やっぱり、とてもいい。

2018年の導入以来、初のマイナーチェンジを受けたIペイス。最大の変更点は内燃エンジンのジャガー同様のメッシュ・グリルを廃したこと。同時に、グレードを示すエンブレムの位置も移動している。最高出力294kW、最大トルク696Nmを発揮する前後2つのモーターで4輪を駆動、0-100km/hは4.8秒をマーク。全長×全幅×全高=4695×1895×1565mm。ホイールベース=2990mm。車両重量=2230kg。車両本体価格=1517万1000円。

写真=小林俊樹(メイン)/茂呂幸正(サブ)

(ENGINE2024年4月号)