登場から半世紀近く、一貫したデザイン・コンセプトで根強いファンを獲得してきたメルセデス・ベンツGクラス。6年振りの大幅アップデートをオーストリアで取材したモータージャーナリストの島下泰久がリポートする。


Gクラス史上初のBEVモデル

1979年のデビュー以来、今年で実に45年。大幅な刷新を行なった現行モデルの登場から数えても6年が経過したタイミングで、メルセデス・ベンツGクラスが改良を受けて登場した。プレミアム・オフローダーのアイコンとして世界中で高い人気を誇るモデルの今回の進化の幅は尋常じゃない。早速その内容をチェックしてみよう。



目玉のひとつが電動化である。内燃エンジンモデルはAMGを含む全車、マイルド・ハイブリッド化を実施。そして更に、コンセプトEQGの発表以来、期待が高まっていたGクラス史上初のBEVモデル、その名も“G580 with EQ technology”がいよいよ姿を現した。

まずは先に発表された内燃エンジンモデルから見ていこう。ガソリンエンジン車のG500は、新たに直列6気筒3.0リッターツインターボを搭載することとなった。最高出力449ps、最大トルク560Nm。そこに同20ps、200Nmを発生するISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせる。



G450dの心臓は、やはり直列6気筒3.0リッターのディーゼル・ツインターボ。こちらも367ps、750Nmを発生し、やはり20ps、200Nmのモーター・アシストが加わる。

外装にも手が加えられているが、これは単なるフェイスリフトではない。すぐに判別できるのは4本ルーバーを用いたラジエーターグリル、開口部形状が変わったバンパー、そして新意匠のホイールといったところだが、実はよく見るとAピラー周辺にも違いが隠されている。Aピラーに重なる樹脂製カバーの形状変更、ルーフへのスポイラーリップの追加などにより空力特性を改善し、更に遮音材の追加により風切り音の大幅低減を実現したのである。これはすべてのユーザーが大歓迎に違いない。



同様に、まさに待望の装備と言えるのがキーレス・ゴー。Gクラスのアイデンティティと言える特徴的なドアハンドルの形状を変更することなく搭載されているあたりに、開発陣のこのクルマへの愛情が表れている。

インテリアではインフォテイメント・システム「MBUX」が最新世代にアップデートされたほか、ダイナミックセレクトに新たに“Trail”、“Rock”、“Sand”のオフロードモードが追加された。悪路走行中に有益な情報を表示するオフロード・コクピット、死角となる前方の路面状況を合成画像で表示するトランスペアレント・ボンネットも採用されている。




AMGと電動モデルにも注目

変更範囲がより大きいのがメルセデスAMG G63だ。V型8気筒4.0リッターツインターボの最高出力585ps、最大トルク850Nmというスペックに変わりはないが、こちらもISGによって20ps、200Nmが追加されている。0- 100km/h加速は4.3秒。従来よりも0.2秒の更新である。

注目はシャシー。新たに4輪の電子制御ダンパーに接続された油圧回路によってロールを抑制するAMGアクティブライド・コントロール・サスペンションが採用されたのだ。オンロードの操縦安定性と、オフロードの接地性、そして場面を問わない快適性が全方位で高められたことは間違いない。これも、マイルド・ハイブリッド化で48V電装系を備えたことで実現できたものだ。





デザインも、よりパワフルになった。フロントバンパーは左右に3本のルーバーが入ったインレットを配する。ホイールは20〜22インチまで、異なる6つのデザインを用意する。

そして内燃エンジンモデルより少し遅れて発表されたのが初のBEV、G580 with EQ technologyだ。但し、こちらについては実は最近、情報の事前リークに対する対策が厳しく、写真の提供が締切に間に合わなかった。なので、内外装についてはENGINE WEBの方でご確認いただきたい。(※G580 with EQ technologyの詳細写真は特設ページにて全写真を公開中!)

遂に訪れた電動化の波を、見事に新しい魅力として活用することに成功した新型Gクラス。不満があるとすれば、納車待ちの長い列が更に延びてしまいそうなことくらいである。

文=島下泰久 写真=メルセデス・ベンツ

(ENGINE2024年6月号)