住宅ローン契約をする際に退職金での返済を視野に入れているケースは珍しくありません。しかし退職金は老後の生活資金の一部でもあるため、ローン返済に多くを費やしてしまうと、将来生活を維持できなくなるおそれもあります。退職金での住宅ローン返済は、年金受給額や毎月の支出などを把握した上で、総合的に判断することが大切です。   本記事では、退職金として3000万円を受け取り、住宅ローン返済に1000万円使っても、年金だけで十分に生活できるかについて解説するので参考にしてみてください。

退職金を住宅ローンの返済に充てても問題なく生活できる可能性は高い

退職金3000万円を受け取り、そのうち1000万円を住宅ローン返済に充てても、手元には2000万円が残ります。3分の1がなくなったとはいえ、かつて話題になった「老後2000万円問題」はクリアしており、問題なく生活できる可能性は高いといえるでしょう。また、定年退職した後には2000万円だけで生活を送るわけではなく、年金受給や再雇用などで収入を得られます。
 
日本年金機構は、老齢基礎年金と厚生年金を合わせた夫婦二人の標準的な年金受給額(令和6年度)を月額23万483円(年額276万5796円)としています。
 
年金・退職金残額2000万円・定年退職後の再雇用などを総合的に考えれば、日々の生活は問題ないといえるでしょう。毎月の生活費次第では、定年退職後に働かなくても、年金と退職金の残りだけで生活を送れる人もいると考えられます。
 
なぜなら退職金などまとまったお金も必要ですが、最も重要なのは生活費など毎月の支出に対して、年金受給額がいくらになるかだからです。
 

定年退職前には生活費と年金を確認しておく

定年後の生活費は各家庭によって異なります。そのため、定年退職前に老後に必要な月々の生活費と年金受給額を把握しておくといいでしょう。
 
定年退職すると一般的には収入が減少するため、収入よりも生活費が上回るケースは少なくありません。「現役で働いている間は、生活費の心配をしたことがなかった」という人も、収入がダウンするであろう定年退職後は、生活費をしっかり意識しなければなりません。
 
ただし、退職金で住宅ローンを完済したなら、賃貸などに比べても住居費などをかなり抑えることができるでしょう。細分化した項目ごとに検討するよりも、全体的な収支のバランスをつかみ、検討することが大切です。
 
老齢厚生年金は、納めてきた厚生年金保険料で大きく変わるため、人によっては日本年金機構が示す基準額より、はるかに多い可能性もあります。
 

突発的な問題に対応できるようにある程度の資金確保は重要

収入の減少する老後生活では、家電や家具が壊れる・住宅設備が破損するといった突発的な問題も考慮した資金計画を立てる必要があります。
 
設備面以外にも病気やけがでの入院・通院なども考えられるため、どのようなタイミングでまとまった資金が必要になるかは予想できません。このような事態に対応するためにも、しっかりと計画を立てて退職金を使うことをおすすめします。
 
ただし、住宅ローンの支払いが完了しているなら不動産売却などもしやすいため、将来を見越しての資金繰りも重要といえます。人によっては住宅ローン完済をしてから数年後、その不動産売却をして老人ホームなどへの入居費用とするケースも珍しくありません。
 

まとめ

退職金を3000万円もらえているなら、住宅ローンの返済に1000万円を使っても問題ないと考えられます。とはいえ、老後の突発的な支出を考えると、退職金を使い切るのは避けたいところです。毎月の支出が収入を上回らないように意識して、場合によっては再雇用や再就職などで年金以外の収入源を確保することも必要です。退職金の使い道と老後の生活設計を、定年退職前に確認しておきましょう。
 

出典

日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー