定年退職の時期が近づくと「このまま老後生活を迎えても大丈夫だろうか」と不安を覚える人も多いのではないでしょうか。預貯金や年金額、生活スタイルなどは人それぞれ異なるため「これだけあれば問題ない」といった正解があるわけではないのも事実です。   本記事では、貯金500万円ある人が65歳で定年を迎えて年金を毎月12万円受け取るケースを想定し、1人暮らしをしながら90歳まで生きるとしたら生活できるのか、資金が不足する場合はいくら稼がなければならないのか解説します。

老後の1人暮らしは月15万円以上かかる?

老後は年金だけで生活できるのか考えるためには、そもそも老後の生活でいくら支出が発生するのかを把握する必要があります。総務省統計局が公表している家計調査によると、2023年の「65歳以上の単身無職世帯」の消費支出と非消費支出を合わせた実支出は15万7673円です。
 
老後不安が尽きない一方で、「ぜいたくさえしなければお金はかからない」と考える人もいるかもしれません。確かに、家族と一緒に生活する場合に比べると支出規模は小さくなることが多いものの、それでも最低15万円程度かかることが分かります。
 
「15万円程度なら大丈夫」と考えていても、大きな病気やけがをして通院や入院が必要になると想定外の支出が発生する可能性もあります。病気やけがだけでなく、日々の生活で欠かせない洗濯機や冷蔵庫といった家電製品が故障すると買い替える必要があります。これらを総合的に考慮すると月20万円以上かかるケースもあるかもしれません。
 

年金だけだと毎月4万円以上の赤字?

仮に、毎月16万円の支出が発生する場合、月12万円の年金だけだと「4万円の赤字」となってしまうため、500万円ある貯金を取り崩して補填(ほてん)する必要があります。
今後も毎月4万円の赤字が続く場合は年間で48万円取り崩すため、約10年で貯金が底をついてしまう計算です。10年後は75歳のため、90歳まで生きるとしても残り15年の生活費をどうするのか対策しなければなりません。
 
月20万円の支出が発生し続ける場合は資金が減少するスピードがさらにはやくなります。毎月8万円の赤字となり、約5年で貯金がなくなってしまいます。
 

生活を安定させるにはいくら稼ぐ必要がある?

「いくらあれば生活が安定して満足できる」のかは、考え方や価値観が人それぞれ異なるため一概にはいえません。ただし年金だけで老後の生活費を全て賄うのは現実的ではなく、定年後も再雇用や転職などで長く働いて収入を確保することで、資産の減少スピードを抑える必要があるでしょう。
 
生活費として毎月20万円の支出が発生する場合なら、最低でも月額8万円稼がなければ家計はマイナスとなってしまいます。不測の事態に備えるためにも10万円以上稼ぐことを目標にしてもいいかもしれません。65歳から月10万円を稼ぐと、90歳までの25年間で3000万円の収入を年金以外で得られます。短期的には少ないと感じるかもしれませんが、長期的には無視できない金額となることが分かります。
 
「貯金500万円あるなら、そこまで頑張らなくてもいいのでは?」と思うかもしれませんが、想定外の出費に備えて、貯金は基本的に手を付けずに残しておければ安心でしょう。
 

まとめ

本記事では65歳から年金を毎月12万円受け取ると、生活を安定させるにいくら稼ぐ必要があるのか解説しました。貯金が数百万円単位であると「これくらい使っても問題ない」と思いがちですが、想像以上のスピードで減少する可能性もあります。「自分は大丈夫」と油断せず、年金に頼らない仕組みを作ることをおすすめします。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2023年(令和5年)平均結果の概要
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー