退職するにあたって、多くの場合、上司との面談などを通じて退職日の相談を行うでしょう。しかし、いざ退職日が近づくと、突然「退職日を1ヶ月延長して欲しい」と頼まれ、勝手に退職日を変更されてしまうケースもあるそうです。   本記事では、退職日を勝手に延長された場合、法的に問題がないか否かについて解説します。

一方的な退社日の変更は違法

結論から述べると、退社日を会社側が一方的に変更するのは明確な違法行為です。そもそも退職するか否かは、退職日の指定も含めて従業員の意思で決定されます。会社側が退職日を勝手に変更する行為は、状況次第では労働基準法第5条で定められている「強制労働の禁止」に該当すると判断されるでしょう。
 
ただし、あくまで会社側がお願いをしている段階、または従業員本人が会社の提案に同意して退職日を延長するのであれば、違法行為にはなりません。もちろん、会社側が退職者を脅迫して同意させた場合は、違法行為に該当します。
 

従業員を引き止めたい会社の事情

従業員が会社を辞める意思を示しているにもかかわらず、なぜ会社側は必死に退職を思いとどまらせようとするのでしょうか。会社が従業員を辞めさせたくない理由として、以下のような理由が考えられます。
 

自分の評価を落としたくない

退職者が出ると、退職した従業員の上司はマネジメント能力に欠けていると判断され、社内評価が下がる場合があります。評価が下がれば当然給料や出世にも響くため、必死になって退職者を引き留めようとしますが、あくまでそれは上司の事情です。
 
当然ですが、退職者にも会社を辞める事情があります。そのため、相手の事情に合わせて退職日を変更する必要はありません。
 

人手が足りていない

人手が足りていない場合も、会社側から退職日の延長をお願いされる可能性があります。昨今はどの業界でも人手不足が問題となっており、従業員が1人辞めただけで業務に影響が出る会社も少なくありません。
 
しかし、人手不足の問題はあくまで会社側で考えるべき問題です。一度でも会社側が退職する日程に合意したのであれば、その日程で辞める権利が従業員側にあることを知っておきましょう。
 

後任が決まっていない

会社側に引き留められる理由として、後任が決まっていない可能性も考えられます。その場合、後任が決まればすぐに退職できると考えがちですが、新しい退職予定日までに後任が見つかるとも限りません。
 
そもそも後任が決まっていなくても、退職に対する合意を得ているのであれば退職希望日に問題なく退職できます。ただし、心象を悪くしないためにも、最低限の業務の引き継ぎだけはしておきましょう。
 

どうしても辞められない場合の対処法は?

人によっては、会社側の押しに負けてしまい、退社日を延期してしまうケースがあります。延長した日に約束通り退職できればさほど問題ありませんが、なし崩し的にその後も勤務を続けさせられる可能性も否定できません。
 
どうしても会社を辞められない場合は、人事部や労働基準監督署などに相談しましょう。それでも退職できないのであれば、退職代行サービスを利用するのも1つの手段です。退職代行サービスを運営しているのは弁護士や労働組合である場合が多いため、合法的に退職手続きを進められます。
 
注意点として、民間の退職代行業者は会社との交渉が行えず、もし交渉に入った場合は違法行為にあたる可能性があるため、トラブルに巻き込まれないためにも事前に運営元などを確認しておきましょう。
 

会社側に労働者の退職日を操作する権利はない!

会社を退職するにあたって、後ろめたさから退職日の延長を受け入れてしまう人は少なくありません。しかし、会社を辞めるタイミングを決めるのは、会社側の権利ではなく労働者の権利です。一方的に退職日を変更され、変更に対して納得ができない場合は、毅然とした態度で拒否しましょう。
 

出典

厚生労働省 知って役立つ労働法 働くときに必要な基礎知識
e-Gov法令検索 労働基準法
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー