ゴールデンウィーク明けはメールや仕事が山積みで、社員一丸となって仕事に取り組まないといけないこともあるでしょう。   では、もし部下から「飛行機代を安くしたいからゴールデンウィーク明けの火曜日にもう1日休みをください」と言われたら、上司や会社は拒否することはできるのでしょうか。

有給の取得時期は原則として社員の自由

まず原則として、有給休暇を取得することは労働者の権利です。有給休暇は、労働者が好きなタイミングで取得できます。たまった仕事を早くさばきたい上司にとっては苦々しく感じられるかもしれませんが、法的には何の問題もありません。
 
「ゴールデンウィーク明けの初日が締め切りの仕事が終わっていない」などの事情がない限り、労働者は会社に申請したうえで有給休暇を取得することは可能です。
 
有給休暇の取得は会社からの許可制ではなく、有休の取得理由について社員から会社に申請する必要もありません。
 
ゴールデンウィーク明けに有休を取得する社員がいたとしても、禁止して出勤を命令したり不当な扱いをしたりすることはできません。休む理由が飛行機代の節約だったとしても、どのような目的で有給休暇を利用するかは労働者の自由です。
 

有給の取得時期について会社に時季変更権がある

原則として労働者が希望する時期に取得できる有給休暇ですが、企業側が有休を取得する時期について変更できる場合もあります。
 
これが「時季変更権」と呼ばれるもので、労働者が請求した時期に有給休暇を与えることで事業の正常な運営を妨げる場合、会社は時季変更権を行使できます。
 
よって、時季変更権を利用することで、労働者の有給休暇を別の日に取得させることは可能です。
 
ただし、時季変更権はあくまで有給休暇の取得時期を変えるという権利であり、有給休暇の取得を拒否できる権利ではありません。
 
また、「事業の正常な運営を妨げる」という条件はかなりハードルが高いものです。時季変更権を行使するには労働者の職務内容や繁忙度、代替要員の確保の困難度、代替による事業への影響の程度などさまざまな内容から総合的に判別されるものであり、企業の思い付きですぐに取得時期を変更できるものではありません。
 
単に「休み明けで業務が大変だから」といった理由では、有給休暇の取得を会社が拒否するのは難しいでしょう。
 

有給休暇を自由に使ったことによる業績の悪化を査定して評価を下げることは可能

前記のように、会社側が有給休暇の取得を拒否したり、直接の制限を加えたりすることはできません。
 
ただし、自由に有休を取得した結果、個人の業績などが悪化した場合に評価を下げることはできます。有休を取得したことではなく、業績悪化に対しての評価であるためです。
 
例えば「ゴールデンウィーク明けに忙しいことが分かっていながら自由に有給休暇を取得する部下」がいたとします。有休を取得したことで締め切りに間に合わず得意先との取引が終了したり、売り上げが下がったりした場合、その結果について評価を下げることは可能です。
 

まとめ

従業員がゴールデンウィークの休みを有給休暇で1日延ばすからといって、業務に多少の影響が出るくらいでは会社が時季変更権を利用することはできません。
 
勝手気ままに有給休暇を取得する従業員に困っているのなら、有給休暇の取得行為に直接罰することはできないので、人事評価制度を改革するなどの対策が必要でしょう。
 

出典

厚生労働省 長期の年次有給休暇の請求と時季変更権行使
厚生労働省 しっかりマスター労働基準法−有給休暇編−
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー