どのような条件で働くかは、労働者にとって重要な問題でしょう。   「正社員として働いているにもかかわらず、通勤手当が支給されない」といった不満を抱え、転職を検討すべきか悩まれている方もいるかもしれません。   本記事では、通勤手当が支給されている企業の割合をはじめ、最低賃金における通勤手当の取り扱いについてもご紹介します。

通勤手当を支給している企業の割合と支給額は?

通勤手当とは、通勤のためにかかる費用として支給される手当のことをいいます。通勤手当を支給することは法律で義務づけられているわけではないため、支給するかどうかは企業ごとに判断することになります。
 
厚生労働省が公表した「令和2年就労条件総合調査の概況」によると、令和元年11月分に「通勤手当など」の諸手当を支給した企業の割合は92.3%ということです。企業規模別にみた割合と、労働者1人当たりの1ヶ月の平均支給額は表1のようになっています。
 
表1

企業規模 通勤手当を支給している企業の割合 労働者1人当たりの平均支給額
令和2年調査計 92.3% 1万1700円
1000人以上 94.4% 1万3300円
300〜999人 96.8% 1万1400円
100〜299人 94.8% 1万800円
30〜99人 91.0% 1万300円

※厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」を基に筆者作成
 

最低賃金に通勤手当を含めるのはNG

企業によっては、通勤手当が別途手当として支給されず、賃金の一部として支給されている場合もあるでしょう。その場合、賃金が最低賃金以上かどうかを確認しなければなりません。
 
厚生労働省によると、最低賃金の対象となる賃金は基本的な賃金に限定しなければならず、付加的な賃金は除外する必要があるとされています。
 
最低賃金法第四条第三項では「当該最低賃金において参入しないことを定める賃金」として、精皆勤手当、通勤手当、家族手当が挙げられています。
 

まずは就業規則を確認しよう

会社が正社員に対して通勤手当を支給していなくても、法律上は問題ないと考えられます。ただし、就業規則に通勤手当を支給する旨が記載されているにもかかわらず実際には支給されていないとなると、話は別です。
 
労働契約法第七条に「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」とあるように、就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件になります。
 
そのため、まずは会社の就業規則に通勤手当について記載があるか確認しましょう。
 

転職すべきかどうかは会社に相談してから検討したほうがいい

正社員であっても、通勤手当がもらえないこと自体には法律上の問題はありませんが、実際には通勤手当が支給されている企業の割合は9割を超えており、そのことを理由に転職を検討される方もいらっしゃるかもしれません。
 
ただし、就業規則に通勤手当を支給する旨が記載されている場合は支給されなければならないため、まずは就業規則を確認したうえで会社に相談したほうがいいでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和2年就労条件総合調査の概況
厚生労働省 第2回 社会保険料・労働保険料の賦課対象となる報酬等の範囲に関する検討会 資料1 通勤手当について
デジタル庁 e−GOV法令検索  労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第七条
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー