子どもの進学にあたって、進学費用が進路選択のハードルとなってしまうケースがあります。奨学金を希望しても、民間の奨学金は競争率が高く受けられない可能性もあります。   ただし、看護学校への進学を考えている方は、自治体の奨学金制度を利用することが可能です。民間の奨学金制度と合わせて、自治体の奨学金制度を知っておくことで、選択肢を広げられるでしょう。本記事では、東京都の制度を例に、自治体で受けられる看護学校の奨学金制度を解説します。

自治体で受けられる看護学校の奨学金制度

一般的な大学に進学する場合、日本学生支援機構の奨学金制度を利用する方が多いでしょう。
 
看護学校に進学する場合でも、日本学生支援機構の給付型・貸与型の奨学金の申請は可能です。ただし、看護学校に進学を目指す高校生の場合、自治体で受けられる奨学金制度として看護師等修学資金貸与制度を利用できます。
 
本項では、東京都を例に看護師等修学資金貸与制度について解説します。

 

看護師等修学資金貸与事業の内容や利用条件

東京都の看護師等修学資金貸与事業は、看護学校等の看護師等養成施設に在学し、将来都内で継続して5年以上看護業務に従事する意思がある方を対象に修学資金を貸与する制度です。また、次のような条件に当てはまるかどうかも貸与資格の条件となっています。
 

・成績優秀で心身健全
・経済的理由で修学が困難
・同種の修学資金を借りていない

 
同種の修学資金を借りていない方が対象となっているため、他の奨学金制度との併用はできないため注意が必要です。
 
貸与資格の条件は自治体によって異なりますが、他の都道府県でも東京都と同様に、その自治体で看護業務に従事することが条件となっていることが多いと考えられます。詳しい条件は、お住まいの自治体に確認してみましょう。

 

高校からの進学時に看護師等修学資金貸与制度を利用したい場合

看護師等修学資金貸与制度は、看護師等養成学校に在学中の方を対象とした制度ですが、高校在学中に予約申し込みをすることができます。
 
東京都の場合、申し込み時点で都内に住所を有しており、都内の高校に在学している方が都内の看護師等養成施設に進学予定であれば申し込みが可能です。手続きは、都内の高等学校を通じて行われるので、希望する場合は在学中の高校の窓口で申し込みをしましょう。
 
予約申し込みをしておくことで、通常よりも早く修学資金が貸与されるため、学費支払いの負担を軽減できます。

 

自治体以外の看護学校の学費に使える奨学金制度

自治体以外で看護学校の学費に利用できる主な奨学金には、【図表1】のような制度があります。
 
【図表1】

日本学生支援機構奨学金 大学や短大、専門学校等の修学資金を幅広く支援してくれる奨学金制度。給付型と貸与型がある。
東京都育英資金貸付事業 東京都私学財団が運営する奨学金制度。都内に住所をおく高校生等が利用できる奨学金制度。
病院奨学金 看護学生等向けに病院が運営する奨学金制度。奨学金の給付を受けた病院への就職が義務付けられている場合が多い。
看護大学・専門学校 専門大学や専門学校が運営する奨学金制度。付属や系列の病院への就職が義務付けられている場合が多い。

筆者作成
 
対象や競争率等が奨学金制度によって異なるため、自治体の奨学金制度と比べて自分に合った制度を利用しましょう。東京都にお住まいの方の場合、東京都育英資金貸付事業も選択肢のひとつとなります。

 

病院や大学・専門学校の奨学金を選択する場合は慎重に

病院や大学・専門学校の奨学金は、卒業後に奨学金を支給された病院(付属・系列)で一定期間以上勤務することを条件に、看護学校等の学費を給付してくれるケースが多いです。一般的に、自治体や日本学生支援機構の奨学金制度よりも借りやすく、利用しやすい奨学金制度ですが、卒業後の進路が限定されてしまう点に注意が必要です。
 
例えば、奨学金を借りるのに3年間の就職が前提で、就職した病院が自分に合っていなかった、看護師の仕事が嫌になった、健康上に問題が生じたなどで3年以内に退職した場合は、奨学金の一括返済を求められるケースもあります。

 

看護学校の奨学金は自治体の看護師等修学資金貸与制度も選択肢のひとつ

高校生が看護学校への進学を目指す場合、一般的な日本学生支援機構の奨学金制度だけではなく、自治体の奨学金制度を利用するのもよいでしょう。また、東京都の場合は看護師等修学資金貸与制度を利用することが可能です。
 
奨学金は、制度によって条件や対象が異なります。病院や大学・専門学校の奨学金は、卒業後に借入先の病院で勤務することが条件で返済が免除される点は魅力ですが、進路が限定されてしまう点がデメリットです。
 
お住まいの自治体の奨学金制度を比較して、自分に合った奨学金制度を利用するようにしましょう。

 

出典

東京都保健医療局 看護師等修学資金貸与事業
独立行政法人日本学生支援機構 奨学金
公益財団法人東京都私学財団 東京都育英資金貸付事業
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー