現在、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給開始年齢は65歳ですが、将来的には70歳になるとの噂があります。本記事では年金が70歳から受け取り開始になると噂される理由と、65歳と70歳で平均寿命までの生涯受給額がどの程度違うのかを解説します。

将来的に年金受け取りが70歳になると噂される理由は?

定年が65歳未満の会社は65歳までの安定した雇用を確保するため、65歳までの以下のいずれかの措置(高年齢雇用確保措置)を実施する必要があります。

●65歳までの定年の引き上げ
●65歳までの継続雇用制度の導入
●定年の廃止

継続雇用制度は、平成25年度以降は希望者全員が対象となるように改正されました。年金の支給開始年齢が60歳から65歳に段階的に引き上げられたときも、60歳定年後の期間で無収入期間ができないように年金の支給開始年齢に合わせて高年齢雇用確保措置の年齢も60歳から65歳に段階的に引き上げてきた過去があります。
 
少子高齢化による社会保険関係の支出や保険料を払う現役世代の負担増加、世界各国で年金の支給開始年齢が65歳以上に引き上げられていること、すでに65歳から69歳の半分以上が働いている状況などから、政府は70歳までの定年引き上げや継続雇用制度の年齢引き上げを導入し、年金支給開始年齢を段階的に70歳に引き上げるのではないかと噂されています。
 

70歳受給になると受給額はどの程度減少する?

令和6年度の老齢基礎年金の受給額の満額(昭和31年4月2日以後生まれの人)は月額6万8000円です。夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な厚生年金額は、平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した場合、合計23万483円となります。
 
23万483円から2人分の老齢基礎年金を差し引くと、厚生年金額は9万4483円であることがわかります。年金の受け取り開始年齢が70歳のときも受給月額が同額だと仮定すると、65歳から70歳までにもらえたはずの年金額は以下のようになります。

●老齢基礎年金のみ:408万円
●老齢基礎年金+厚生年金:約975万円

このように65歳と70歳受給では老齢基礎年金のみの人でも総額408万円、厚生年金に加入していた人は総額975万円も受給額が減少することになります。
 

平均寿命の延びを考慮に入れると?

内閣府が公表している令和5年版高齢社会白書によると、2050年の平均寿命は男性で84.45歳、女性は90.50歳と推計されています。2021年と比較すると男女ともに3歳ほど平均寿命が延びていることになります。
 
この平均寿命の延びを考慮に入れると、受け取り開始年齢が70歳になっても平均寿命まで生きれば受給額の減少を2年分に抑えることができます。その結果、老齢基礎年金のみの人は約163万円、厚生年金に加入していた人は約390万円の減少となります。
 

まとめ

年金の受給開始年齢が65歳から70歳に変わると、5年間で老齢基礎年金のみの人は408万円、厚生年金加入者は975万円も受給額が減少する計算になりますが、平均寿命の伸びを考慮すると減少分は老齢基礎年金のみの人で163万円、厚生年金加入者で390万円となりました。
 
ただ70歳までの再雇用制度が義務化されれば、65歳から70歳までの収入は今より多くなる可能性もあります。たしかに年金の総受給額減少という負の側面はありますが、65歳以降も働き続きやすくなることで、生涯獲得賃金の増加や年金に頼らない収入源を得ることも可能です。65歳以降も働きたいと考えている人には朗報となるかもしれません。
 

出典

厚生労働省 高年齢者の雇用
厚生労働省 平成16年年金制度改正 支給開始年齢について
厚生労働省 令和6年度の年金額改定についてお知らせします
内閣府 令和5年度版高齢社会白書
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー