会社から管理職への打診をもらえれば、非常にうれしいことのように聞こえますが、実際はどうなのでしょうか。一般的には年収が上がりますが、一方で「残業代がつかない」と聞くこともあるでしょう。また、近年では「管理職にはなりたくない」という意見も多いといわれます。   本記事では、管理職と残業代の関係や、管理職への昇進について解説します。ぜひ参考にしてみてください。

「管理職」と「管理監督者」

「管理職」であっても、原則として残業代は発生します。一方で、「管理監督者」には残業代の支払義務がありません。それぞれの違いを押さえておきましょう。
 
「管理職」はあくまで会社内での職務内容(仕事の役割)に過ぎません。そのため、残業代は支給されることが原則です。
 
一方で「管理監督者」は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」のことを指します。管理監督者に該当するかは、職務内容をはじめ、責任や権限といった実態によって判断されます。この「管理監督者」にあたる場合には、労働基準法において残業代を支払う必要がありません。
 
これが、「管理職は残業代がつかない」と言われる理由です。「名ばかりの管理監督者」になってしまうと、給与面での優遇を受けられません。
 
補足ですが、管理監督者でも深夜手当はしっかりと受け取ることができます。労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)の規定は管理監督者でも変わらず適用されるため、ほかの社員と同様に、22時から翌5時までの労働に対し25%以上の割増賃金を受け取ることが可能です。
 

給与待遇面の確認が必要

管理監督者に該当する場合には、他の従業員よりも給与面において優遇されている必要があります。なぜなら前記のように管理監督者は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」のことを指すからです。
 
一般的には役職手当などで、給与面の向上が図られるでしょう。しかし管理職になったことによって給与水準が下がってしまう場合には、要注意です。役職手当が付いたとしても、他の従業員より賃金面の優遇があるのか、よく確認しましょう。
 

管理職になりたくない人は約61.1%

2018年に厚生労働省が公表した調査結果では、役職ではない社員のうち、「管理職以上に昇進したいとは思わない」と答えた人は、約61.1%です。
 
その解答理由は「責任が重くなる」(71.3%)「業務量が増え、長時間労働になる」(65.8%)「現在の職務内容で働き続けたい」(57.7%)「部下を管理・指導できる自信がない」(57.7%)といったものでした(上位5つの複数回答)。
 
同調査の解答結果からは、次世代を担う労働者の価値観が多様化し、管理職を目指す人が多くないことが分かります。
 

管理職になるかは、今後のキャリアを見据え総合的に判断を

ひたむきに仕事に取り組み、その内容が評価され、管理職の打診を受けられるのはとてもうれしいことですね。
 
一方で管理職になることで給与面が悪化する可能性や、伴う責任の重さや仕事量が増すことを想定した場合、管理職になるという判断に慎重になる人も多いでしょう。
 
しかし、管理職になることで「マネジメント経験」を積むことができるため、その後の社内出世はもちろん、転職時の選択肢を広げることができます。管理職経験者の求人案件にも応募できるようになるため、転職市場での価値が高まります。
 
給与面や今後のキャリアまで考慮した上で、管理職になるかどうか検討してみてはいかがでしょうか。
 

出典

e-Gov法令検索 労働基準法
厚生労働省 平成30年版 労働経済の分析−働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について−
 
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート