事務用品のような小さなものから、接待費、出張時の交通費や宿泊費といった高額なものまで、個人が経費を立て替えて後日精算するということが、多くの会社では日常的に行われています。   個人のクレジットカードで会社の経費の支払いをして、ポイントやマイルを貯めたことがあるという人も少なくないのではないでしょうか。中には「本当にポイントやマイルをもらっていいのだろうか」と不安に思いながら行っている人もいるかもしれません。   本記事では、経費で貯めたポイントは誰のものなのか、そのポイントを個人が使うことには問題があるのかどうか解説します。

立て替えで生じたポイントの所有権はあいまい

経費の支払いによって生じたポイントについて、所有者を明文化した法律はありません。費用を負担したのは会社であるためポイントの所有者は会社だとする解釈と、個人が支払ったのだからポイントは会社の財産にはならないとする解釈があり、専門家でも見解が分かれるようです。
 
ポイントが会社に帰属すると解釈され、それを会社の許可なく使った場合は業務上横領罪に問われる可能性があります。
 
業務上横領罪は刑法第253条にて「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する」と規定されている犯罪で、決して軽い罪でないことは知っておきましょう。
 

就業規則に示されている場合は従う

就業規則等に、立て替えで得たポイントについて明記されている場合は注意が必要です。
 
「経費を立て替えたことによって得たポイントは会社に帰属する」とある場合は、業務上横領が成立する可能性が高まります。
 
「経費の立て替えをする際にポイントを得てはいけない」と明記している会社もあるようです。その場合、ポイントを得たことに対して、規則に違反したとして懲戒処分を受ける可能性があります。立て替え時の支払いには、現金や、ポイントが発生しない電子マネーを利用するとよいでしょう。
 
就業規則等にポイントに関するルールがあるかどうかを確認し、必ず守るようにしましょう。
 

ポイントが所得と判断され課税される可能性もある

経費の立て替えの際に「ポイントを貯めていい、貯まったポイントを好きに使っていい」と会社が許可しても、税務上の疑義が生じます。経費の立て替えで得たポイントが会社からの給与の扱いとなるかもしれないためです。
 
国税庁の解釈では、個人が取得したポイントを個人が使用した場合は「使用した消費者にとっては通常の商取引における値引きと同様の行為が行われたものと考えられる」として、課税対象とはならないとされています。しかし、本来会社が得るはずだったポイントを個人が使うとなると話が変わってくるのです。
 
給与所得には、会社から支給される給与などの金銭はもちろん「給与所得者から受けた経済的利益」も所得に含まれるとされています。本来会社に帰属するはずのポイントを使って個人が得た利益も、給与所得になると解釈される可能性があります。
 
給与所得と解釈された場合は、所得税や住民税支払いの義務が発生します。
 

会社のルール次第だがポイントをつけない方が無難

現実問題として、会社の経費を個人のクレジットカードで支払ったり、ポイントカードを提示したりして得たポイントについてルールを定めている会社は少ないでしょう。しかし、会社としてポイントの扱いについてルールを定めている場合は、それに違反すると懲戒処分を受けるなど問題となるケースがあるので注意が必要です。
 
ルールが明文化されていない場合でも、支払いの際には現金あるいはポイントがつかない電子マネーを使うなどして、余計なトラブルを避けるほうが無難かもしれません。
 

出典

e-Gov法令検索 刑法
国税庁 No.1907 個人が企業発行ポイントを取得又は使用した場合の取扱い
国税庁 No.1400 給与所得
 
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士