今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は、新NISAでのつみたてに特化して解説した勝盛政治著『新NISAでつみたては会社員の最強アイテム』の一部を特別に公開します(全3回/本記事は第2回)。

※本記事は勝盛政治著『新NISAでつみたては会社員の最強アイテム』(高橋書店)から一部を抜粋・再編集したものです。

【税制面】NISAつみたて投資枠は受け取り時に税金や社会保険料がかからない!超安心な強み!

NISAでのつみたてが、資産形成において取り上げられるべき最も重要な点は、運用面ではこれまでお話ししたように、長期投資にフォーカスしていること、それとともに前章で全体観としてお話ししたように、受け取り時には税制面や社会保険料で対象外なので負担がないこと、まさにこの点にあります。

iDeCoも年金なので受け取る際にその金額が収入として扱われ、課税対象になります。運用益が課税対象ではなく、受け取る額すべてが収入とされる点がポイントです。

一時金で受け取ると退職所得となり、年金形式で受け取ると雑所得として、毎年の他の所得と合計されて課税されます。ここで考えるべきは、iDeCoだけでなく、他の年金などの所得もあわせた時にどうなのかという点です。

会社員は退職所得として、勤続20年間であれば一年につき40万円(20年間で800万円)、20年間を超える部分では、一年につき70万円の退職所得控除が適用されます(これも控除枠を減らす見直し議論が出てきているようです)。

たとえば30年間だと1500万円(20年間×40万円+10年間×70万円)になります。

この控除を差し引いたうえで、さらに2分の1にした金額が退職所得として所得税と同じ料率テーブルで課税されます。この部分はかなりの優遇税制なのですが、企業の年金がある場合には、退職所得として一時金で受け取るとそれだけで控除枠の多くは使ってしまうので、iDeCoの受け取り部分は控除枠をはみ出て課税される可能性があります。

ちなみに、退職所得として受け取るものは、国民年金保険等の社会保険料の対象にはならないので、退職所得での受け取りは有効に活用したいものです。

一方、年金形式で毎年に受け取る場合は雑所得の扱いとなり、前章で見たように、他の所得と合算されて所得税、住民税とともに社会保険料の対象にもなります。これは仮に所得税を控えめに5%と見積もっても、住民税10%、社会保険料10%とすると合計約25%の負担です。多くの人は掛け金をかける時には気にしていませんが、色々な年金を受け取る人ほど、控除枠や受け取り時期を上手に使ったほうがいいのです。

入口の掛け金ではメリットを受けていても、出口において年金形式で受け取る場合には、税金と社会保険料でそれ以上の負担を支払うことだってあり得ます。皮肉なものですが、途中の運用期間で大きくお金が増えるほど、出口では負担額が増える計算になります。このように、最後の受け取り方は出口戦略と呼んでもいいくらい大切なポイントなのです。

これに対してNISAの場合には、出口での受け取りは非課税なので、こういった心配はありません。逆に言えば、他の受け取りとの兼ね合いで調整弁として柔軟に使うことができるのがNISAです。年金が手厚い会社員ほど、NISAつみたて投資枠は手放せないアイテムなのです。これは公務員の方々でも同じです。

【費用面】iDeCoは制度上の費用がかかる。NISAは相対的に低い

実際にお金を他人に預けるとか運用してもらうために託す場合には、iDeCoやNISAでなくても、何らかの形で金融商品やサービスを通じて行うことになり、そこには手数料がかかります。それが銀行預金の場合には、私たち預金者は貸出金利よりも低い預金金利でお金を預けることにより、その金利差を実質的な手数料として銀行に支払っています。投資信託を通じて運用する時も保険商品でも手数料等がかかりますが、表面上の手数料として示されているのか、商品の中に含まれているのかによって見え方が違うだけです。

その中で、時間の経過とともに昔と比べて手数料が大きく下がったのは、投資信託です。昔はかなり高かったのですが、手数料を分かりやすい形で開示するルールが定められ、ネットなどで比較されることにより競争原理が働き、現在では私から見ても「こんなに低くていいの?」と思うくらい低い水準にあります。ですから、投資信託を選ぶ際に昔ほど手数料に躍起にならなくてもよい商品が並んでいます。

その中でも、NISAつみたて投資枠では利用できる投資信託の条件により、買い付け手数料ゼロ、運用期間中にかかる手数料もタイプごとに上限が定められていて、より安心できるのはすでにお話しした通りです。iDeCoに採用されている投資信託も騒ぐほどではありません。企業型であれば各運営機関、個人型iDeCoは金融機関が投資信託を採用しますが、長期投資を前提にした制度で運営側も加入者のことを第一に考えているので、過度に手数料が高い商品は採用していないはずです。このように考えると、商品の手数料水準ではNISAのほうが基準は明確であることによる安心感が際立っていますが、そこまで大きく取り上げるような問題点ではありません。

他方、制度における費用負担には違いがあります。確定拠出年金の企業型は企業が負担を受け持つ部分もあるので一概には言えないのですが、個人型iDeCoには制度上、加入者である個人が負担する費用があります。

2023年時点では、制度に加入している限り口座管理手数料として、年間約2000円かかります。そして、お金を受け取る際にも年金形式で受け取る場合には、一回の受け取りに関して給付事務手数料として440円かかります。大きな金額で利用するのであれば、手数料の影響は相対的に小さくなるのですが、掛け金が少ないとか、受け取る際にこまめに受け取るほど、手数料がかかる計算になります。

たとえば、積立期間として20年間、受け取り期間として15年間、口座を維持したとしましょう。そして、受け取りに際しては、公的年金の受け取りがない奇数月の隔月に年6回、受け取ることにしましょう。このケースではトータル約11万円の費用がかかる計算になります。

上記以外にも、加入時や還付金が生じた場合の事務手数料として、一時的にですが、それぞれ数千円程度かかります。

それに対して、NISAでは制度に関する手数料等は基本的にかかりません。解約する場合や受け取る場合にも、細かい費用はほとんどかかりません。この点も無視できないものです。投資信託などの運用商品にかかる費用ではなく、制度面としてかかる費用という点で比較すれば、NISAに軍配をあげてもいいでしょう。

●第3回【NISAでつみたて vs iDeCo―金融機関選びがより重要なのはどちら?】では、利用時期及び金融機関選びの観点から「NISAでつみたて」とiDeCoの違いについて解説します(5月8日公開予定)。

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勝盛政治著『新NISAでつみたては会社員の最強アイテム』(高橋書店)